客席の中へと消えた3人の男・・・
少しだけ、恋しい、と想いを口にする大女優アンナ・マニャーニ。
凝った創りの、恐るべき構造の映画。
トップシーンで、舞台の幕が上がる。
そこへ登場するイタリアン伝統芸“仮面劇”の巡業一座。その劇団が演じる物語の幕が、さらに上がり・・・
どこまでが舞台で、どこからが現実か解らない瞬間が入り乱れる。ラストは冒頭の様にカメラがより引いていくと、それは舞台上の出来事であった、と締め括るが、登場した3人の男、総督、騎士、闘牛士への恋心は、ヒロインから消えない・・・3人の男は、客席へと消えた、と舞台上で語り部は囁きかける。
そして呟く「少しだけ、恋しい」と。
二重三重の幕による構造ながら、ハッキリしない、曖昧な進行で、ズンズン進むのが、かつてない。
“あっと驚く幕引き”を観る。
フランスからアメリカへ、そしてインドの次に流れ着いたイタリアでの唯一の作品。逞しくこんな創造をするルノワールの凄さ。横断する流浪の巨匠たる逞しさ。
しかもそんな一本へ、ネオ・レアリズムの女神アンナ・マニャーニを起用し、代表作の一本をモノにした。