矢吹健を称える会

群盗の矢吹健を称える会のレビュー・感想・評価

群盗(2014年製作の映画)
2.4
 思えば『悪いやつら』は真面目な映画だったわけだが、それを作ったおりこうさんが、頭の悪いやつらの真似をするとこうなってしまうのだろうか。序盤から炸裂する回想&モノローグは観客への親切心のつもりなのでしょう……これこれこういう理由で憎しみを胸に募らせたんだ見目麗しきカン・ドンウォンさんは……というのをこんこんと説き聞かせてくださって本当にありがとう。他人のことを慮ることができる、そういうやつだよこの監督は。えらいもんだよ。しずかちゃんのパパだって納得の気づかい力だよ。
 しかしそれを聞かされてからカン・ドンウォンさんの暴虐ぶりをしみじみ観察してみると、親に愛されなかったのでひねくれましたという中学生日記に出てきそうな人による武力と権力をカサにきての農民いじめ、というメチャクチャ矮小なところに収斂されてしまう。しかも農民たちからわりとせこい方法で土地を収奪したりしていて、ナニワ金融道かと。
 いや、矮小なら矮小なりの魅力というのが出てくるわけで、そういうのを巧く役者の存在感とすりあわせて演出していたのが『悪いやつら』だったはずなんだけども、カン・ドンウォンさんは山口貴由作品を思わせる玉乱美青年なのである。長剣の扱いも見事と言うほかないし、髷を切り落とされてその美しい髪が夜に閃くさまは幽鬼のようで、これはカリスマっすわと息を飲んでしまったのだが、しかしそういう人間がやることじゃないだろう寸借詐欺?は。『十三人の刺客』を絶対に見ているはずなのにこれでは、いけないと思う。

 あと個人的にはあのオチではつまらない。どこにも焦点が当たってない。