道人

スノーホワイト 氷の王国の道人のネタバレレビュー・内容・結末

スノーホワイト 氷の王国(2016年製作の映画)
2.8

このレビューはネタバレを含みます

【2016.05.28 劇場観賞(字幕:古田由紀子さん)】

 『スノーホワイト 氷の王国』…俺達の木こり、クリヘムさんのエンジェルマッチョぶりは健在!

「愛は勝つ」(`・ω・´) シャキーン

「ウホホホホホーイ」死亡フラグ回避からの「あれっ心配した?もしかして泣いてるの?」

「いい作戦がある」(キリッ→字幕にして一行

「そして殺す」

 いや、前作の記憶はおぼろげなんですけどね…今回、白雪姫全然出てこないし。

 …予告編、かなりミスリードしてるんですね。予告編だと邪悪な女王の最凶タッグに俺達の木こりが立ち向かう!って感じだけど、ラヴェンナ・フレイヤ女王姉妹の関係性は、実際に見た後に感じる印象は大分違います。映像面では相変わらずゴージャス。楽しい画面です。

 魔法の鏡は相変わらずの禍々しさ。あの闇の化身のようなマント姿が黄金の流体で表現されてるの、ほんと好き。
 そしてその呪いにも似た強力な魔力は、前作の「勝利者」であるスノーホワイトをも蝕む。御伽話のイメージでは「小鳥さん達、おはよう」ってな感じにお花畑で戯れてそうな白雪姫が、小鳥達の死体や枯れた草花が散乱し、己以外の命が絶えた
居室で、魔法の鏡の誘惑に抗いながら絶叫するシーン、一瞬のシーンだけど、印象に残りました。でも、誘惑に屈せず遠ざけられたのは、さすがに「正義の女王」の矜持。

 …今回はゴブリンのデザインが格好いいの!あの黄金に狂ったゴブリン達…あれ、ヒエラルキーの上になるほど、縄張りの煮立った感じの「黄金の川」で水浴びできるとか、そんな感じなのかなぁ。心身ともに黄金に蝕まれてるゴブリンとのバトルが一番面白かったです。
 ゴブリンの血液はタールなの?あれ、赤壁の戦い前に諸葛亮と周瑜がお互い手のひらに「火」と書いて笑い合うぐらいの「火計」への弱さ。サラの火矢で燃え上がる青い炎は美しかったんですけどね。
 今回の木こりさんのアクションで一番好きなのも、ゴブリン絡みかな。ゴブリンキングの立派な角を逆手に取ったブレーンバスター! 
 このシーンを見た後、クリヘム繋がりで、例のクワガタなみに立派な角つきの兜を被ったロキにソーがこの技を極めるシーンを想像しちゃったんですが…ロキが泣いちゃうから止めたげてね、ソー兄ちゃん(笑)。

 …三人の女優の豪華な共演が話題の今作…ジェシカ・チャステインの「私は外さない」なアーチャーぶりと独楽のようにくるくる回る足技を駆使したアクション、エミリー・ブラントの「氷の梟の仮面」を被る時の指先の美しさ(どうでもいいけど、白熊は乗り心地悪そう…白馬じゃダメなのか…笑)…女優陣にはみんな見せ場がありますが、やっぱりシャーリーズ・セロンのゴージャスな邪悪さが圧倒的な存在感。

 ラヴェンナは前作でも主人公級の存在感でしたが、今作でも「黄金の魔性」とでもいうような邪悪な美しさは健在です。シャーリーズの金粉ショー(?)が見られるのは『スノーホワイト』だけ!私もラヴェンナとあんなチェスを指してみたい人生だった…命がけだけど。
 でもねー、前作に感じた「悪女/魔女の凄み」は今回薄れてたかなぁ…。ラヴェンナ自身は鏡と同化したことで「肉体から解放された」と言っていたけど、彼女の「強さ」は肉体があったからこそ…老いていく肉体への恐怖と、美しい肉体への執着があったからこそだったんじゃないかなぁ、と思いました。ラヴェンナ自身というより、ラヴェンナの残留思念が鏡によって形を持って復活しただけというか…。ラヴェンナは鏡を我がものにしていると思っているようだけど、彼女は結局鏡に「喰われた」んじゃないかなぁ、なんて…。
 あ、ラヴゥンナが「黄金の化身」と化したことで、彼女の力を象徴するものが鴉から“黄金の鳥”に変わってしまったのも、鴉と魔女の組み合わせこそ至高と思っている私には残念でした。

 ラヴェンナとフレイヤ、姉妹の関係性も、もっとじっくり見せてくれたらいいのになぁ、なんて思うようなドラマチックさだったんですが、後々それを利用したラヴェンナの奸計があったとはいえ、事の発端はあの、婚約者がいながらフレイヤに手を出したあの家臣の男のクズっぷりですよね…あの目配せ野郎…。

 …あれっ、そういえばラヴェンナって前作では『幻想水滸伝III』のサロメにそっくりな弟がいたよね…?過去のエピソードにまったく出てきてないな…。

 フレイヤは、氷のゆりかごのシーンが好きなんですが、その最期にもっと見せ場が欲しかったというか…もう少し優しい最期を迎えさせてやってほしかったというか…。死にゆくフレイヤの傍らで、それに一瞥くれただけでエリックとサラがイチャイチャしているのは百歩譲ってよしとしてもだ…あそこはタルが氷の女王の最期を看取りに行ってやるべきじゃないの!?
 
 タルはもったいない扱いだなぁ、と思うんですよ。ハンツマンの中で、彼だけがフレイヤを見る目がちょっと違いましたよね。少年時代の最初の邂逅でその凍てついた目と手のひらに魅了されてしまったのがタルという男で、その女王への「忠誠」は、氷の王国での絶対の禁忌「愛」に根ざしたものじゃなかったのかなぁ…。彼が最後にフレイヤを裏切ったのも、彼女の「暴走」を止めるのには、もはや倒すしかないと思ったからなんでは…と悶々と妄想してしまったのでした。フレイヤの最期の言葉「幸運な子達ね…」は、なんとなくタルにこそ聞いてほしかったんです。

 …フレイヤの「氷の王国」が崩壊したことによって、この世界では南の大国の女王であるスノーホワイトの一強になったのかな?
 北の諸国を席巻したフレイヤでさえも手を出すのに躊躇したスノーホワイトの王国が誇る精強な軍隊。それを率いるのが前作で結構好きだった公爵の息子・ウィリアムだったのは嬉しかったです。「王子」なんて呼ばれてたけど、彼の王国でのポジションはどんな感じなんだろう。
 ウィリアムのスノーホワイトへの「愛」が報われたのかは分からないけど、女王としての彼女への「忠誠」は揺るぎなくて、彼女と彼女の王国を守るために、ラヴェンナの悪政で傾いた国家組織を建て直し、世界最強の軍隊を作り上げたんでは…なんて思うと胸熱ですな。

 ヒットした前作が公開された頃には「三部作」構想だという話も聞きましたが、続きはあるのかなぁ。続編があるとしたら、結局投げっぱなしになった「聖域」が舞台になったりするのかしら。

 パンフは720円。要所を押さえた出来です。キャストのインタビューが、フレンドリーな口調で訳されることの多い洋画のバンフにしては珍しく「ですます」調で、何だか新鮮でした(笑)。
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