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クーデターのmaverickのレビュー・感想・評価

クーデター(2015年製作の映画)
3.9
東南アジアの某国で、アメリカ人技師の家族が突然のクーデターに巻き込まれる話。

暴徒と化した集団は、法も秩序も無視して敵と見なす者を殺戮してゆく。平和な日本では考えられないことだが、怒りに身を任せた人間の行動はこうも恐ろしいのかとぞっとする。テロもこれと同じ。自分らの主義主張を掲げ、関係ない人の命をも奪うこうした行為が許されてはならない。秩序を保つための警察や軍隊が正常に機能していることも大事なんだなと思い知らされた。

突如発生したクーデターに巻き込まれる恐ろしさを描き、そこから力を合わせて必死に逃れる家族の絆の強さをも描いてある。武闘派ではないごく一般人の父親が、絶対に家族を守り抜くという信念だけを武器に戦う姿が感動的だ。母も強いし勇敢。自分達がもしこういう状況に巻き込まれたらと、置き換えながら観ることが出来る。こんな時に真の家族の絆が試されるのだろう。
どちらかといえば情けない男のイメージのオーウェン・ウィルソンが強い父親を好演している。勇敢な部分だけでなく、娘2人に対する優しさも好感度抜群だった。母を演じるレイク・ベルも同様に良かった。一家を助ける謎のアメリカ人を演じるのが、5代目ジェームズ・ボンドのピアース・ブロスナン。歳を取ってもこの人は相変わらずかっこいい。ジェームズ・ボンドを彷彿させるセクシーさとスマートさ。下ネタ言っててもかっこいい。なるならこんな中年男になりたいものだ。

この手の作品って、大抵野蛮なアジア人が悪者として描かれるが、このクーデターが起きた背景を考えさせられるような内容というのは良かった。また国民全員が暴徒というわけではなく、アメリカ人へ優しさを見せる現地の人々もいる。一部暴徒と化した集団は、これら現地の人の平和をも踏みにじっているのだ。関係ない人間を巻き込んでの殺戮を行う強硬派には怒りしかない。そこへの怒りを主軸としながら、大国のあり方をも問う社会派な要素を含めた点は評価したい。


最初から最後まで緊迫感は半端なかった。内容的にも結構怖いが、それ以上に感動がある。観て良かったと思える作品だ。ある日突然、理不尽に奪われる命の悲劇について考えさせられる。日本も他人事ではないと本作を観て多くの人が真剣に考えるだろう。皆が幸せに生きる。そんな平和な世の中であってほしい。
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