アニマル泉

夜の人々のアニマル泉のレビュー・感想・評価

夜の人々(1948年製作の映画)
5.0
「今や映画とはニコラス・レイである」ゴダールが宣言したニックの美しい処女作。ボウイ&キーチを描く作品の系譜なのだが、ルイスの「拳銃魔」がフィルム・ノワールなのに対して本作はメロドラマだ。ニックは「ラブ・ストーリーだ」と明言している。トップカットのボウイ(ファーリー・グレンジャー)とキーチ(キャシー・オドネル)のツーアップのラブシーンからいきなり鷲掴みにされる。本作は全てのラブシーンが素晴らしい。暖炉の火の前で、雨だれの影が落ちるなかで、拳銃を取り合いながらキーチが絶対に渡すまいと拳銃を必死に離しながらのキス、どれもなんと官能的なのだろう!深夜の結婚式の場面の愛おしさは感涙しかない。長距離バスから飛び降りて、簡易結婚式場のガラスごしに2人を祝福するように移動撮影で寄り添い、2人が階段を上がっていく。至福に溢れて切ない映画史に刻まれる名場面である。ここで2人は自分達の車を買う。本作は車の2人が素晴らしい。車の中だけは2人の幸せな空間になる。結婚式場は後半に再び登場して2人が社会に追い詰められる重要な場面になる。車の窓ごしの縦構図でボウイが式場の入り口の階段を降りてくるショットが美しい。
ニックはアップだ。アップが力強く、美しく、艶めかしい。本作は空撮が多い。タイトルバックも脱獄囚が逃げる車を空撮で捉える。
キャシー・オドネルが素晴らしい。絶望と希望のあいだで不安定に揺れる存在感が見事だ。片目でアル中のチカモウ(ハワード・ダ・シルヴァ)も印象的だ。
劇伴奏が少ない。シーンの省略も特徴的で、強盗場面がオンで描かれるのは最初だけである。2人の軸で描かれるので、チカモウやT-ダブ(ジェイ・C・フリッペン)の死は描かない。腕時計が重要な小道具になる。
RKO制作。本作はニックが脚本化したものの制作がしばらく見合わされていたのだが、ドア・シャリーが製作本部長に就任して製作された。
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