スクリーン2番

トレジャーハンター・クミコのスクリーン2番のレビュー・感想・評価

3.3
映画「ファーゴ」を観てからの方が内容をより理解できて助かるかも。
今作の元ネタは「コニシタカコの自殺」とGoogleで調べてもらえれば一発でヒットすると思う。簡単にいえば「ファーゴ」という映画に出てきた埋蔵金を現実のものと勘違いしたコニシタカコという日本人がノース・ダコタ州に現れて、そして凍死したという事件だ。
「ファーゴ」はフィクション映画でありながら物語冒頭にノンフィクションであるかのような触れ書きを表示した事で有名である。
コニシタカコはその触れ書きをそのまま受け取り、劇中の埋蔵金が実際にあるものと信じて捜索に出てきたという話だが、まぁホントの所はよく分かっていない都市伝説的なお話なのである。

物語に登場する主人公のクミコは、そんなコニシタカコをモデルとして作られたキャラクターなのだ。
劇中のクミコは現実の何事も受け止められずに逃げる人間。久々に会った友人との食事からも途中で逃げ出し、仕事も放棄してノース・ダコタへ向かい、異国で家に泊めてくれた親切な老婆の家からも逃げ出す。そういえばウサギの飼育からも逃げていたな。
そんなクミコは現実逃避としか思えない宝探しを決行する。

物語は終始盛り上がりに欠けるというか、曲で言うなら何処がサビかイマイチ分からない具合で、ぬーっと進んでぬっと終わる。なので決して良い映画だったと問答無用の高評価は出来ないのだが、何故か嫌いになれない。
それはクミコという変わった人間が、東京の社会人生活に馴染めずにどれだけの息苦しさを感じたかを映画の中盤までかけてジックリと見せられるから。一抹の希望であった今の絶望の全てをひっくり返してくれる埋蔵金に憧れる気持ちも分からんでもないと感じてしまったからだ。
そして死んでしまった日本人女性がいるとかいないとかを思えば、ただのマヌケで根暗な女が雪原をウロウロしているだけの映画とはとても思えないのである。

クミコが母親からの電話で悔しさやら怒りやらを抑えきれずに泣いてしまうシーンは、そんな社会不適合者の烙印を押された人間のリアルが描かれていると感じた。