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黄金のアデーレ 名画の帰還のRyuのレビュー・感想・評価

3.8
1998年 ロサンゼルス。姉を亡くした老女 マリア・アルトマンは姉の遺品の手紙から戦時中にナチスに奪われた芸術品の返還請求のことを知る。オーストリアのモナリザと言われる名画「黄金のアデーレ」は画家 グスタフ・クリムトが描いたマリアの叔母 アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像画であり、ナチスに奪われ、現在はオーストリア政府のものとなっていた。マリアは友人の息子で駆け出し弁護士のランディ・シェーンベルクに依頼し、オーストリア政府に絵画の返還を求める。

ナチスによる迫害は芸術品にまで行き届いていたことはチラッとは知っていました。「黄金のアデーレ」のように略奪されたものの他にも、ユダヤ人が作者だから とか、ユダヤ系の内容だから などの理由で処分されてしまったものもあるそうです。今作では、そんなナチスに奪われた芸術品を自分の手に取り戻そうとする人の奮闘が描かれております。
実話ものの法廷ドラマですから、結果は何となくは予想つきます。それでも、国を相手にした裁判で、自身のルーツに関わることなのもあって、胸がアツくなりましたね。
今作は法廷ドラマであるのと同時に、戦争ドラマでもあります。要所要所で戦時中の回想シーンが挿入されますが、これがまぁ効果絶大。時代に振り回されて、物も故郷も家族も奪われてしまったマリア。これらの回想シーンにより、彼女にめちゃくちゃ感情移入できました。特にラストの回想シーンは涙腺にきますね。この絵画を取り戻すということは、家族や故郷など、思い出や尊厳を取り戻すことでもあったのだとも思えました。
ヘレン・ミレンが演じたマリア・アルトマンという人の熱意がものすごかったです。おばあちゃんらしく、ちょっとな頑固なところもあったりするけど、チャーミングなところもあったりして、魅力的な人でした。ライアン・レイノルズ演じる弁護士 ランディもいいキャラ。最初はお金のために依頼を受けるけど、色々調べていく内に気持ちが入っていく という王道パターンがこれまた良き。マリアが折れても、諦めずに戦おうとする姿勢はめちゃくちゃかっこよかったです。自身のルーツも関係しているから、余計に気持ちが入りますね。調停での演説が素晴らしかったです。2人に協力してくれる記者のフベルトゥスの存在も良かった。めちゃくちゃ大きな役割は担ってないかもしれないけど、父がナチス党員だったのもあり、罪滅ぼしの意識で協力する姿勢には感銘を受けました。彼は彼でオーストリア人としての誇りを取り戻せたのだと思いました。
やはり実話ものの法廷ドラマは良いですねー。今作はそこに戦争が関わっているため、さらに心に響きます。
エンディングで、未だに10万以上の略奪された美術品が返還されてないことが語られます。過去は変えることはできないけど、前には進んでほしいものです。
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