ヤマナカ

ピクニックのヤマナカのレビュー・感想・評価

ピクニック(1936年製作の映画)
5.0
馬車がトコトコ走ってきて、少年の釣り竿がサッと画面に伸びてくる冒頭の瞬間にすでに充実した映画だと思ってしまう。
あまりに醜く戯画化された俗悪ブルジョワファミリーはまるまる太った父親をはじめ、しゃっくりの止まらない娘婿アナトール、それを見てソプラノの狂ったような発作をおこす母親、耳の遠い祖母とそれぞれにひどいズレを示すが、唯一シルヴィア・バタイユ演ずるアンリエットだけが田舎の夏の爽やかな風と光に溶け込むことができるので、彼女がブランコをこぐだけでこの上なく素晴らしい画面になり、それを窓枠という額縁を通して見る二人の男たちも、映画を観ている者に適切な(ある意味反面教師として?)視点を与えてくれる。そして「滑るように」進む小舟があまりに心地よいのでついそれまでの不安も忘れて遠乗りしようとする母親同様に、あまりに心地よい舟と水の流れる画面のために、もっとこの映画が続いてほしいとつい、思ってしまう。
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