higashi

64 ロクヨン 前編のhigashiのレビュー・感想・評価

64 ロクヨン 前編(2016年製作の映画)
4.6
すごい。すごいよ。
この映画、アツすぎる。
熱さで涙した邦画はいつぶりだろう。

鑑賞後、しばらく動悸がおさまりませんでした。

前後編だからと尻込みせず、是非見て欲しい傑作です。
後編を、一刻も早く見たい!


わずか1週間で幕を閉じた、昭和64年。
その年に起きた少女誘拐殺人事件。

この事件は、通称「ロクヨン」と呼ばれ、
未解決のまま14年が過ぎようとしていた。

当時の捜査に当たっていた三上は、
刑事から広報官へと異動となり、
記者クラブと泥沼のやり取りを繰り広げていた。

そんな中、本庁の県警視察により、
再び「ロクヨン」事件に目が向けられる。
しかし、そこには恐るべき真実が隠されていた…。


横山秀夫さんが大好きです。
ドライな書き方の中に、熱さが忍ばせてあるあの感じ。
今作の原作は未読ですが、これもやっぱり熱かった。
熱さを常に解放しているわけではなく、内包して、ここぞという時に解放させる。
やっぱり好きです。

そして、この分厚い原作を見事に映画化した瀬々監督には拍手を送りたいです。
まだ前半だけなので、後半を見ないと分かりませんが、
ここまででも十二分に、骨太激アツ映画に仕上がっています。
さすが278分の「ヘヴンズ ストーリー」作り上げた監督です。
監督の最高傑作になる予感がします。

まずオープニングの誘拐事件発生のシーンから、心を鷲掴み。
緊迫感、テンポの無駄のなさ、昭和の終わりかけの何とも言えない淀んだ空気。
このオープニングだけでも、見に来て良かった!と思わせてくれます。
その後も、三上が隠された真実に近づいていく展開を、
緊張感たっぷりに見せてくれています。見事の一言です。

かといって、キャラクターの人間ドラマが、
中途半端かと言われるとそうではなく、そちらもとても丁寧。
カメラワークも躍動的で迫力ありました。


さらに、キャストの豪華さに脱帽です。
佐藤浩市さん、綾野剛さん、榮倉奈々さん、瑛太さん、
窪田正考さん、坂口健太郎さん、滝藤賢一さんなど
メインキャストは挙げきれなないほど豪華です。
でも注目は、さらに脇を固める役者さんたち。
脇の脇を固める方々です。この方々も良い人使ってるなーという感じ。
あの映画の人だ!という感じなんですが、見覚えのある人ばかりです。
「冷たい熱帯魚」で騙されて死んだ人もBARのマスター役で、ご出演されてました。
とにかく知らない役者さんが出ているシーンはほぼなかったです。本当にすごい。


そして、出てくるキャラクターたちの演技が熱い!熱すぎる!
その中でも特に、佐藤浩市さんの演技は凄かった。
自分の娘が失踪中でありながら、「ロクヨン」事件を追う。
サラリーマンであれば誰しもが経験するであろう、上からの無理な命令。
それらを受け止め、全力でぶつかる様に目頭が熱くなります。
特に前編の見せ場である、記者クラブとの話し合いのシーンは、
あまりの熱さに涙腺が崩壊しました。先日みた「スポットライト」に負けず劣らずの熱さです。
嫌味な記者役の瑛太さんもすごく良かった。熱いんだよな、みんな。


安易なマンガ原作映画が多いと批判されがちな日本映画界に、
一石を投じる映画になっていると、僕は思います。

2016年を代表する、見応えたっぷりの骨太映画。
是非、劇場でご覧ください。

後編、待ってます!
higashi

higashi