青いむーみん

怪物はささやくの青いむーみんのレビュー・感想・評価

怪物はささやく(2016年製作の映画)
4.1
 児童文学の賞であるカーネギー賞を受賞した原作はジュブナイルでありながら人間の根源的な部分をテーマにしており、分かりたくないことを分からせるために怪物が物語るストーリー。物語の力を信じた作品で非常に好ましく読ませてもらった。その作者であるパトリック・ネス本人が脚本を担当している映画なので全く心配せずに鑑賞できた。多少の増減はあるもののほぼ原作と同じだ。大きく異なるのはリリーという存在がないこと。母子の共通点に関する展開があること。いじめっ子に関しては原作のようにもっと主人公コナーへのある象徴的な存在であるということを強調しても良かった。あと、微妙な間の取り方で重さが少し損なわれている感じはした。しかし、観るべき映画、物語であることは確かだ。怪物という存在に対しての嘲笑や訝しみは物語には無関係だ。コナーにとっての怪物はどういう存在であるのか、怪物が語る物語の意味はなんなのか、それによってコナーは何を学ぶのか。それは非常に普遍的であり、誰もが共感できることだ。それを明確に無駄なく魅せてくれるこの映画の対象に区切りはない。
 役者に関しては、あの母親役がフェリシティ・ジョーンズと知って大きな疑問があったが、実際観てみるとさすが女優。クリスチャン・ベールかと思うほどアジャストされた身体には驚かされた。スターウォーズを観ていないので比較が博士と彼女のセオリーになってしまうが、まるで違う人のようだった。コナー役のルイス・マクドゥーガルは完全に適役。不安げだったり不満そうに見えるネガな表情はお手の物。リーアム・ニーソンは…なんというかいくらリーアム・ニーソンでもあんなにでかくはないし、声も加工されてるんだけど役柄はあのリーアム・ニーソンの今までのキャラクターを引き継いだような存在なのでぴったり合っている。
 さぁ人間の内面を詳らかにするこの素晴らしい物語を観に行かない理由はない。是非とも観てほしい。あなたにもいずれ来るであろう認めたくないこと、分かりたくないことに対面するとき。そのときにこの物語が力になる。