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スーパーフライのkaomatsuのレビュー・感想・評価

スーパーフライ(1972年製作の映画)
2.5
カーティス・メイフィールドの気だるく官能的なファンキー・ソウルが全編を覆う、70年代ブラック・ムービーの異色作。

ニューヨークのハーレムで、主人公の麻薬ディーラーが、一世一代の大仕事を仕掛け、成功したらこの世界から足を洗い、恋人とハーレムを抜け出して逃避行しようと画策する話。低予算映画であるばかりか、登場人物はほぼ麻薬漬けか麻薬密売人、警察もグルという、犯罪の香りに満ちたハーレムの現状を掬い取った内容のため、いわゆるクライムストーリーとしての面白さを期待したら、肩透かしを食らうようなチープな内容だ。ただ、個性的なファッションやド派手なキャデラックなど、当時のブラック・パワーの機運を濃厚に感じたい方や、カーティス・メイフィールドのサウンドトラックを堪能したい方にはお薦めの、かなりカルトな一作だ。

カーティス・メイフィールドのファンとして、彼の他のアルバムと共に本作のサウンドトラックを長年愛聴してきたが、ほぼ彼のオリジナル・アルバムとも言える素晴らしい内容なので、つい映画のほうは未見のままだった。今回DVD化を知り、思いも寄らず本作に出会え、しかも、カーティスご本人も出演して「Pusherman」を歌う姿を拝めることができて、もう感慨ひとしおだ。本作以降、B級クライム・サスペンス系映画におけるサウンドトラックの方向性をガラリと変えた彼の功績は大きく、例えばブルース・リー主演の『燃えよドラゴン』はラロ・シフリンのスコアだが、まさに『Superfly』のカーティス・メイフィールドの音楽なしには、あのダーティーでファンキーなサウンドは生まれ得なかっただろう。
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