Inagaquilala

グレートウォールのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

グレートウォール(2016年製作の映画)
3.1
万里の長城を舞台にした歴史超大作かと思いきや、製作費のかかったただの怪獣映画であった。確かに140億円をかけたという映像は豪華でダイナミックだが、主人公たちが闘う相手が、まるでエイリアンのようなグロテスクな怪獣だったとは、観るまで想像できずちょっと面食らった。

宣伝のための映像などでは、その姿かたちををなるべく見せないようにしているようだが、この怪獣がまったくもってどうにも作品になじまない。そもそもあれだけ立派な衣装やセットを用意しているのに、怪獣たちの貧弱さが目につく。いろいろ政治的な思惑もあったのか、闘う相手が人間ではなく、怪獣だとはまったく肩すかしもいいところだ。

その怪獣の名前だが、「饕餮(とうてつ)」という。中国の伝説上の動物で、羊の体、人の顔、虎の牙、人の爪を持ち、大きな頭に大きな口を持つということだが、見た印象はほとんどホラー映画のキャラクター。60年に一度現れるその怪獣たちを防御するために、万里の長城がつくられたというのは、いくらなんでも無理がある。

闘う相手が怪獣となると、当然のことながら、登場人物たちの内的葛藤などもほとんど存在しない。そもそもそのような作品ではないのかもしれないが、これが「初恋のきた道」を監督したチャン・イーモウかと思うくらい、ほとんど中身のない作品だ。

まあ、製作費のかかったセットと衣装とアクションを楽しめばいいのかもしれないが、相手があの怪獣だと思うと、遊園地のアトラクションとたいして変わりはない。万里の長城がテーマ、チャン・イーモウ監督、マット・デイモン主演ということで、かなり期待していたのだが、まったくもってとんでもない代物だった。

これなら同じような歴史無視作品の「キング・オブ・エジプト」のほうがまだよかったかもしれない。まあ、「ロード・オブ・リング」や「ハリー・ポッター」と同じものだと思えば、楽しめなくもないのだが。

マット・デイモンも「マンチェスター・バイ・ザ・シー」の主演をケイシー・アフレックに譲って、こんな作品に出ているから、アカデミー賞を逃してしまうんだろうな。救いは、美しい女性司令官リン・メイを演じたジン・ティエン。「キングコング:髑髏島の巨神」にも出演していたけれど、この作品では唯一光り輝いていた。
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