ベルベー

リリーのすべてのベルベーのネタバレレビュー・内容・結末

リリーのすべて(2015年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

誇り高く哀しい物語。自分が自分の求める性ではなかったら…ゲルダの行いはきっかけにすぎず、ずっとアイナーはリリーでないことに苦しんでいたのだろうなあと、序盤の女性を見つめるアイナーの表情から察することができる。妻を悲しませることを理解しながらも、自我を通すしかなかったリリー。ずっと自分の苦しみばかりではなかったことが、最後の慟哭に表れている。哀しい結末だけど、安らかな夢を見たことを語るリリーは幸せそうだった。性同一障害だけでなく、二重人格?な側面もある彼女の物語は、寓話的な美しさと誰もが胸を掴まれる切実さに溢れていた。

この物語のもう1人の主人公ゲルダ。彼女の人生も壮絶。彼女が愛した夫は二度と帰ってこない…精神的、肉体的、そして真の意味での喪失と、何度も夫を失わなければならなかったのだから。悲劇的にも思える運命の中、リリーを支え続けたゲルダの強さが光る。

トム・フーパーの柔らかい映像美もさることながら、エディ・レッドメインとアリシア・ヴィキャンテル、2人の若き名優の演技がとにかく素晴らしい。エディは前年の「博士と彼女のセオリー」「イミテーション・ゲーム」に通じるけど、全く新しく難しい役を演じきって、それを受けるアリシアがまた素晴らしい。零れ落ちるピアノの音色が印象的なアレクサンドル・デスプラの音楽も良い。
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