四六時中アカデミーマン

リリーのすべての四六時中アカデミーマンのレビュー・感想・評価

リリーのすべて(2015年製作の映画)
4.0
___本当の自分になりたい、ただ願いはそれだけ。

世界で初めて性転換手術を受けたリリーエルベの半生を描いた物語。

舞台設定は1920年のデンマーク、そこでエディ・レッドメイン扮する夫のアイナー(後にリリーエルベとなる)のトランスジェンダーに妻のゲルダ(アリシア・ヴィキャンデル)がお互いに葛藤しながら本当の愛とは何かを見つけるという話。

まず初めにこの作品は完成されたラブストーリーでありながら、「なぜ人はここまで人を愛することが出来るのか。」と人間力の強さを感じさせられた。

今では比較的トランスジェンダーというものの関心が高まり、理解されつつあるがこの作品の時代背景にはそれがほとんど無い。そういった描写をトム・フーパー監督は街の風景や、視線、声、音楽で華やかにそして切なくまるでその時代に連れて行かれたかのように表現している。

中でも好きなのが、アイナーが風俗街の窓売春を見ているシーンである。ガラス窓越しに売春婦の艶めかな踊りを自分と重ね合わせマネるアイナー。しかし映るのはリリーでもアイナーでもなく居場所の無い自分…

このシーンを見て、一枚のガラス窓が「男」と「女」という性別の境界線を物語っているようで自然と心に来るものがあった。
ラストシーンも愛とはここまで情熱的で希望と言うものはここまで儚いのか。と胸を締め付けられるものがあった。