ただのすず

リリーのすべてのただのすずのレビュー・感想・評価

リリーのすべて(2015年製作の映画)
3.9
世界ではじめて性別適合手術を受けたリリー・エルベとその妻ゲルダの物語。

男、女とは一体何をもってそう決まるのだろう、容姿、顔つき、着飾った服、化粧、美しい仕草、リリーとゲルダがいたずらっ子のようにそれを解放していく過程はとても楽しかった。
確かに美しい、女のようだと思った、でも劇中一番私が女性性を感じたのは、衰弱したリリーを抱きしめ、あらゆる苦しみから守ろうとしていたゲルダの姿だった。
彼女の愛は、女として、ある時には母のように、友人のようにしなやかに形を変えて、でも変わらずにリリーを慈しんでいた。その姿を女性だとどうしても感じてしまう。
対してリリーは命を懸け自我確立を目指す、その意思の強さは燃えるようで愛など二の次になってしまう、とても男性的だ。
男性器がなくなれば、子供が産めれば女なんだろうか、違うと感じた。ただリリーが幼少期どれだけ自分を偽り抑制して生きてきたのかということはあっさりとしたものだったので想像するしかない、リリーの自分自身とは一体どういう姿だったのだろう。あまりにも儚く終わってしまった。ラストシーンのように。

ゲルダがリリーを男性のように抱こうとするシーンが涙ぐましくて好き。男性の骨格を残したままの女装姿はとんでもなく美しくて観る価値がある。

あと、透明感のある音楽が良かった、アレクサンドル・デスプラ。