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ふたつの名前を持つ少年の一人旅のレビュー・感想・評価

ふたつの名前を持つ少年(2013年製作の映画)
4.0
ペペ・ダンカート監督作。

ポーランド出身の作家:ウーリー・オルレブによる2001年発表の小説「Run Boy Run(走れ、走って逃げろ)」の映画化で、ユダヤ人強制居住区から脱走した少年の過酷な道のりを描いた実話を基にした作品です。

1942年~45年のポーランドを舞台に、ユダヤ人強制居住区から脱走した8歳の少年の姿を描いた“戦時サバイバル”で、ユダヤ人であることを隠すため偽名と嘘の経歴を用い、各地を転々としながら生き残りを図る少年の過酷な逃避行の日々を映し出しています。

ナチスによる執拗な追跡やユダヤ人である少年に対する人々の差別といった少年を待ち受ける理不尽な出来事を描きつつも、その一方で、孤児である少年を心優しく迎え入れてくれるポーランド人家族との疑似親子的な交流が不安と絶望の状況下において一筋の希望の光として描写されています。また本作は、命を守るために“ユダヤ人”であることを封印した少年のアイデンティティの回復をテーマとしています。

近作『異端の鳥』(19)のように、戦時下の東欧を生き延びてゆくユダヤ人少年の姿を描いた戦時サバイバルですが、『異端の鳥』ほどの苛烈な描写はありませんのでご安心ください。
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