明石です

軽蔑の明石ですのレビュー・感想・評価

軽蔑(1963年製作の映画)
4.2
売れない推理小説を書き、夢のある満ち足りた生活を送っていた男が、お金を求めて華々しい映画の世界に飛び込んでからというもの、キャリアも妻との関係も何もかも上手くいかなくなる話。愛にしがみつく男と、愛にしがみつく男を軽蔑し別の愛へ乗り換える女という普遍的なテーマが直球で、それも淡々と描かれ地に足のついた恐ろしさがある。無くなった愛は、舐め終わったロリポップキャンディのようにあってもただ不愉快なだけだということがよくわかる描かれ方。

画的には初期のゴダール映画ではあまり試みられていない(はずの)風景をメインに映したロングショットが多用されていて、歪な人間模様と原色強めの絵作りの合間に時おり挟まる美しさにハッとさせられる。

しかしジャケットに映ってるフェルメールの絵みたいな女の人が、場面によっては黒髪だったり金髪だったりして、それが同じ人だと気づくのにけっこう時間がかかった笑(顔を認識する能力ゼロでスミマセン)。そしてフリッツ・ラングが本人役で出ていることに驚く。なんとなくドストエフスキーとかフィッツジェラルドみたいな大昔の偉人的な人物だと思っていただけに余計に!!賢明な人間は無能な相手を虐げたりしない、という言葉が妙に胸に残ってる。あと、なぜ彼女を理性の餌食にできるだろう、という小粋な表現も。

——好きな台詞
「もう僕を愛せないか」
「それが人生よ ”C’est la vie.”」
明石です

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