Kamiyo

Wの悲劇のKamiyoのレビュー・感想・評価

Wの悲劇(1984年製作の映画)
3.6
1984年 ”Wの悲劇” 監督 澤井信一郎
脚本 荒井晴彦 澤井信一郎  原作 夏樹静子

先日 NHK BSプレミアムの放送で観賞。
「時の河を渡る舟に、オールはない」
薬師丸ひろ子自身が歌う主題歌 “♪「Woman "Wの悲劇"」松本隆作詞. 呉田軽穂(松任谷由実)作曲の
あのメロディが たまらなく好きなのです。

薬師丸ひろ子のデビュー作品が”野性の証明”という高倉健さんとの競演をしている、こともあってちょっと普通のアイドルとは路線が違った気がします。
『セーラー服と機関銃』で一世を風靡して、実生活では
すぐに受験休業、大学生になって『探偵物語』でカムバックし、俄然「大人の女優」として駆け上がり始めた薬師丸ひろ子。この作品は、そんな薬師丸ひろ子が最も輝いていた一瞬を映し出したものであり、同時にピークを打ってしまった作品だったように思います。

日本版”イヴの総て”とも言う
舞台裏ものといえば、往年のハリウッド映画という印象ですが、この作品の参考とした映画に「イヴの総て」が上がっていました。まさに、そういった雰囲気は感じました。三田佳子がベティ・デイヴィスで…、なんて考えると楽しいのでした。
原作の夏樹静子の推理小説を作中の舞台劇にする大胆なアイディアは、公開当時も話題になった。
舞台上の母役羽鳥翔(三田佳子) と娘役三田静香(薬師丸ひろ子) が、それを演じるスター女優羽鳥翔と劇団研究生三田静香の関係に重なる二重構造だが、そんなある日、スター女優・羽鳥翔(三田佳子)のパトロンが腹上死したスキャンダルの身代わりとなった三田静香は、その代償として舞台「Wの悲劇」のヒロインの座を手に入れる。
現実世界の方を殺人事件にしなかったことで、三田静香が意図せず掴んだチャンスをきっかけに「女優」の才能を開花させていく
したたかな三田静香の姿を描くヒューマンドラマになっている。

明日のスターを夢見る研究生たちの内幕を垣間見せてくれるところが興味深い。
若い男女が同じスタジオで演技に踊りに磨きをかける様には青春映画にも通じる汗と涙に満たされる一方では、恋や嫉妬も渦巻いているのはごく自然なことなのだなと思わせる。
なんといってもまだ少女のあどけ無さがぬけない薬師丸演じる三田静香がもう男を知らないわけじゃない、というのだからどういう世界なのかはわかろうというもの。

舞台と現実の交錯のしかたも、その両方で翻弄されながらも自分を見つめる三田静香の姿も。
三田佳子をはじめとする大俳優陣の大芝居のなかで、薬師丸ひろ子の素人っぽさが目立ちます。
彼女の持ち味は、この前の映画でもその後も、素のままの素朴な女性というところなのでいいんだけど、これほどの野心があるように見えない…。
あの記者会見のシーンや、夜の公園での「顔はぶたないで、私、女優なんだから」は、今観ても思わず唸らされるものがあります

そんな中にあって大女優オーラ全開の三田佳子がグイグイ見せてくれるのが楽しいです。例の一件以降、露出が少なくなって寂しいと改めて思いました。

蜷川幸雄がコワイ演出家の役を演じてるのが
おもしろいです。
イケメン枠が三田村邦彦と世良公則というのもツーンときます。

ヒロイン役を射止めた菊地かおり役の高木美保が新人らしからぬ演技でスターを目指す気位の高そうな女性を好演しているのが目を引く。主演の薬師丸を食ってしまうほどの演技で劇中劇とは逆のことが起きているようだ。

ラスト恋人の世良公則に告げる別れの言葉が静香の切ない心情を表していて、それは薬師丸のストップモーションが
最後まで消えないように後をひく。

僕から見ると 女性は 皆 女優です。。。
「~でさあ、そんなん出来ると思う?」
「出来るわよっ! 貴女、女優でしょう?!」
「(言われてハッとする。そして乗る)女優……」

昭和だなあ。。。
この映画をいま観てむちゃくちゃ懐かしく感じる
表参道のカフェや稽古中に喫煙、全員レオタードでダンス練習、自宅前で待ち伏せ、芸能リポーターによる記者会見。この映画はその意味でもなかなかに貴重。
Kamiyo

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