天下の超かぼちゃ王大将軍

セルフレス/覚醒した記憶の天下の超かぼちゃ王大将軍のレビュー・感想・評価

セルフレス/覚醒した記憶(2015年製作の映画)
4.5
「生き逝き行く」

「ザ・セル」、「落下の王国」のターセム・シン監督最新作。

ガンに侵された富豪のダミアンに、とある研究機関から差し伸べられた一つの手。
大金の代わりに、新たな肉体を買う。
肉体は培養されたもので、そこに意識を移すことで、新たな人生を歩めると。
ただしそれには条件がある。
現人生は予定通り肉体的にも社会的にも死を迎え、
その事を誰にも話すことなく、新たな人生を生きる事。
ダミアンはその条件を飲み、新たな人生を謳歌する。
肉体に精神が定着するまで、特殊な薬を飲みながら、
また、一定の監視を受けながらの生活で。
しかし、ある日、薬を飲み忘れたダミアンは、
「見知らぬ記憶」とも言える生々しい幻覚を見る。
不信に思ったダミアンは、研究機関の監視の目を盗み、
「見知らぬ記憶」の場所へと向かう。
しかし、そこで出会ったのは、培養された体にはいるはずのない、
肉体の持ち主の妻と娘だった。

■「ターセム・シンのベースソロ」

面白かった。

ターセム・シン監督の作品は「ザ・セル」で魅了されて、
「落下の王国」、「インモータルズ -神々の戦い-」、「白雪姫と鏡の女王」と全部BDで持ってるんやけど、本作はだいぶ不安があった。

独特な映像センスを持つターセム・シン監督のタッチを下支えしてた、
衣装の石岡瑛子さんが亡くなってからの初めての映画だったから。

ま、「白雪姫と鏡の女王」くらいから、オモロイけど迷走始めとるなぁと思ってたってのもあるけど、石岡瑛子さんがいない上に、
予告見る限り、監督らしい映像が無いってのでね、大丈夫かなって。

杞憂だった。

ま、映像美って点でいえば、これまでの作品からすると影を潜めていて、
そこを期待されると「期待はずれ」になってしまうんだけれど、
だからこそよくわかったのは、この監督はやっぱり普通に上手だ、という事。

元々MTVやCMのディレクターやってて、今回はそのセンスが爆発してる感じがある。

とにかくテンポがイイ。リズム感がイイ。

シナリオ的に言えば、正直そんな中身がパンパンに詰まったサスペンスってわけでもないし、
アクションだって、派手なアクション映画はもっと他にもある。

けれど、なんだろな、じっくり、マッタリという感覚がベースにあるんだけど、
テンポ自体はスゲー軽快でアップテンポ。
なんやかんやの独特の映像センスがベースにあって、それら複合して思うわけだ。

「あ、やっぱターセム監督の映画やな」って。

むしろ、これまであった、目を惹く映像美が控え目になった分、
もとからあったんであろう、ターセム監督のベースのセンスってのかな?

例えば、音楽でいえば、ボーカルやギターって花形があるけれど、
ベースやドラムってリズム隊が全体の下地を作るわけやけど、
上手い人のベースやドラムって、ソロもかなり惹き込まれるんだよね。

本作は、そういう意味ではターセム監督のベースソロみたいな映画だと思う。

今までも根底で担っていたけれど、当たり前で気付かなかったセンスの良さと、
その部分でも監督のらしさというか、特徴があるんやなぁと。

いやぁ~、ターセム監督流石やなぁって思った。

■「子供が可愛い映画は面白い」

「落下の王国」の子役もそうやけど、美女子役!って感じじゃないんやけど、
ターセム監督の映画の子役はほんと、子供としての可愛らしさがあるわな。

それがやっぱポイント大きい。

本作の場合、凝ったストーリーは無いけれど、
深い味わいが出せるストーリーでもあり、それはやっぱ、「人生」。

大きく、主人公の人生と、肉体の持ち主の人生の二つ。
登場人物は多くいるけれど、本作の演出軸はそこ。

そして、肉体の持ち主の人生は、記憶の映像に頼ることなく、
妻役と娘役の二人の存在で浮き上がらせてる感じ。

二人を通して、肉体の持ち主の人生を見て、
そして、そのちいさな娘に、主人公は自身の実の娘を投影する。

それにはこの子、ちょうどいいんだよ。

妙に存在が主張され過ぎず、
「父から見た娘」の可愛らしさが大きく印象に残る。

結局振り返ると、多く、くどく語ることは無く、
ただ、その一点で、主人公の心情を慮れる。

結果、泣いたしね。

色んなもの入れまくったら、雑味になる。

深みは、存外シンプルで、微かに感じ、スッキリとするものだと思う。

日本人はそれをわびさびと言うんだろう思うけど、
ターセム監督の映画はこのわびさび感があるよね。

まぁ、全部がとは言わないがw

■「ジャケがウンコのようにダサい」

何故なのか。

観た人は分かると思うが、ジャケが違和感しかない。
そんな映画じゃなかったと。

さて、映画としては良かった。

実はこの映画、劇場で見れなかったからBD買って観たんよね。

好きな監督の映画は、どうせ買うから先に買っちゃうんだけど、
まあ外れたことは無い。

ターセム監督、今度は「エメラルドシティ」っていうドラマで監督と製作総指揮務めるようで、
予告を見た限り、こっちはビジュアル面でもらしさが出てそうで、イイ感じ。

本作で安心の面白さを見せてくれたので、俄然見る気になってきた。
hulu再契約せなあかんけど。