ぴぬこ

アイヒマン・ショー/歴史を写した男たちのぴぬこのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

ユダヤ人を強制収容所送りするに至る判断を下したアドルフ・アイヒマンがイスラエルの法廷で裁かれ、死刑判決を受けるまでを撮影し全世界に放送したテレビ製作側から捉えたフッテージ。
自らもアウシュビッツのサバイバーであるプロデューサー、ミルトンが、赤狩りで業界から追われて仕事がなかった映画監督レオをイスラエルに呼び寄せ、厳しい制限をクリアしつつ裁判の撮影にあたる。
アイヒマンも同じ人間、自らの怪物が犯した非人道的な大虐殺の記録を目の当たりにすれば何かしらのリアクションがあるはず、とその瞬間を待ち受けるが、一貫して無表情を貫くアイヒマン。レオはアイヒマンに取り憑かれるようになり、アウシュビッツ収容所の証人が証言中にショックで気絶する瞬間を捉えるのに失敗、ミルトンと対立に至る。
人間としての弱さを露わにしないアイヒマンに自らを乱され、撮影から降りようとするも、投宿先で食後の一服中、チェコスロバキア移民である女主人の腕に刻まれた番号に気づく。彼女もサバイバーであり、レオに期待していると伝えられる。そこから最後まで裁判を撮り続ける決意でレオが再び現場に臨む場面は、心揺さぶられるものがあった。
アウシュビッツ強制収容所解放から70年の時を経て数々の映画が製作されているが、先日観た「サウルの息子」とは全く違うアプローチながらも引き込まれる佳作でした。
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