アキラナウェイ

アイヒマン・ショー/歴史を写した男たちのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

3.4
前回に続き、GEOで娘に急かされたので、つい手に取ったあ行の映画。

マーティン・フリーマン主演だし、ホロコーストものだし、それだけでクリップしていたけど、「アイヒマン」を題材にしている映画はどれでも観たいと思っていて。

アドルフ・オットー・アイヒマン(ドイツ語: Adolf Otto Eichmann)。ホロコーストに関与し、数百万の人々を強制収容所送りにした、ナチス政権下のドイツの親衛隊中佐。

1961年、世界の注目を浴びたアイヒマン裁判をテレビで生中継した実在のテレビマン達を描いた作品。

うーん。

映画として派手さには欠けるけど、題材が題材なだけにこれは仕方がないか。

驚くべきは当時の実際の裁判の映像を織り交ぜながら、当時のホロコーストの映像をこれでもかと見せつけてくる、精神的にはかなりタフネスを要求される重さ。

そして、番組の監督を務めるレオ・フルヴィッツ(アンソニー・ラパリア)は、アイヒマンに人間性の欠片を見出そうと、取り憑かれた様に彼にカメラを向ける。600万人ものユダヤ人を虐殺したアイヒマンを「悪魔」として断罪するのではなく、「人間」として罪を認めて欲しいという思いに駆られて…。

しかしどれだけ悲痛な証人の訴えを聞いても、悲惨な映像を観ても、顔色一つ変えないアイヒマンの姿に愕然とする。自身の行為については「命令に従っただけ」だと主張を続ける彼は一体何者なのか。

目を伏せる事も、
顔を歪める事もしない。
とても血が通った人間だとは思えない。

ドラマとして大きな起伏もないので、映画としては物足りないが、いつのまにか僕達は裁判の行方を固唾を飲んで見届ける側に立ってしまう。

これはもう、ドキュメンタリーだよ。

驚くべき程痩せ細った身体の囚人達を見て、涙が一筋零れた。

悪魔、非道、鬼畜。
そんな言葉で片付けたくはないのに、あのアイヒマンの無表情を見てしまうと、もう何も言えない。

番組のプルデューサー、ミルトン・フルックマンを演じたマーティン・フリーマンのほんの少しの茶目っ気すら無ければ、この映画は更に重くなっていただろう。

ショッキングな映像も多く、閲覧注意です。