オリカ

LION ライオン 25年目のただいまのオリカのレビュー・感想・評価

4.5
5歳の男の子が迷子になってしまい、そのまま回送電車で遠くまで行ってしまう…
彼が大人になり、わずかな手掛かりを元に家族を探す。

実話ということに驚いてしまった。
家が貧しく、子供も働きに出るような過酷な環境なのに、サルーの思い出の中では貧しさの苦労よりも、兄や母親から愛されていた美しい記憶しかないのがとても切なかった。
5歳だとどんな環境でも疑問を持つことなく、受け入れることができるのかも。

迷子になって彷徨うシーンはとても辛かった。
どれほど不安で怖かったことか。
サルーはたまたま運が良かった。
同じストリートチルドレンでも、不運な目に遭ってしまう子供も沢山いることを思うと胸が痛くなる。



------以下ネタバレ-------




まずサルー役の子が本当に可愛い。
とても純粋でワンパクなところもあって優しい子。
兄も母親も愛情深く、とても優しくて。
貧しいと性格が歪んだりして、子供を虐待したりしそうなものなのに。
サルーが大人になっても家族に会いたい、と思うのはそれだけ愛されていたということ。
素直に会いたいと思えるというのが重要だと思う。
(ツライ記憶しかない場合、そこにわざわざ戻りたい、関わりたいとは思わない気がする)

途中で悪い大人も出てくるけど、サルーは運良く被害を受けず(詳細は不明だけど)保護されて、養子として沢山の愛情を注がれて成長したけど、これは本当に奇跡的なことだと思う。

今が幸せなら過去のことはもう良いじゃん?って思ったりもするけど、人はどこかのタイミングで自分の存在について立ち止まったり考えたりするものなんだと思う。
サルーのような過酷な環境でなくても、傷付いた記憶や逆に励みになる記憶など、自分が生きてきた過去を振り返ったりするものなのかもしれない。
自分の中で引っかかっているものを解決することで、前に進める、ということもある。
サルーの場合は本当の家族に自分の無事を伝えなくては前に進めなかった。
自分をずっと探し続けているかもしれないのに、自分だけが幸せに暮らしているという罪悪感もあったと思う。
大人になって、自分が居た環境が貧しく厳しいものだと理解すればするほど、罪悪感で苦しかったのではないかな、と思う。

最後、家族に会えて本当に良かった。
こんなの見せられたら泣くに決まってるでしょ…
お兄さんは残念だったけど、現在の状態を知ることも目的だったのだから、知ることができて良かった。

エンディングの写真はズルイ…
こんなの見せられたら泣く…
すくすくと成長して、新しい家族に愛されて本当に良かった。
新しい環境でも問題が全くない訳ではないと思うけど、サルーは幸せになれる人なのだと思う。

観て良かったと思う映画でした。

迷子になって彷徨っている時に
拾ったスプーンでスープを飲む真似をしているシーンが印象的でとても切ない。
オリカ

オリカ