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アンナと過ごした4日間の一人旅のレビュー・感想・評価

アンナと過ごした4日間(2008年製作の映画)
5.0
イエジー・スコリモフスキ監督作。

向かいの女を愛する孤独な中年男の姿を描いたドラマ。

ポーランドの名匠イエジー・スコリモフスキ監督による“変態的”恋愛ドラマの秀作で、遺体焼却場で働く孤独な中年男:レオンが向かいの看護師寮に住む女:アンナへの恋心を募らせていき、こっそり双眼鏡で彼女の部屋を覗いたり、彼女が就寝中に家の中に侵入しては秘密の逢引きを繰り返していく…というお話で、友達もいっぱいいる快活な若い女を愛してしまった陰キャラ中年男の一途な片想いの行方を、ポーランドの寒々しい田舎風景の中に綴っています。

まるでキエシロフスキーの傑作『愛に関する短いフィルム』(1988)を彷彿とさせる作品です。両作品ともポーランド映画ですし、向かいに住む女を一方的に愛してしまう男を描いた点でも一致しています(『愛に関する~』でも望遠鏡で覗き見していました)。

素朴な片想いを通り越した主人公の“ストーカー”的行動に寒気が止まらない逸品であります。双眼鏡で覗き見するという行為はまだ可愛らしいものですが、女が就寝している時間を狙って家の中に侵入するという過激な行動は恐怖そのものです(しかも予め睡眠薬を盛っておくという気の利きよう)。ただ、女の家で主人公が取る行動が興味深い。女のほつれた服のボタンを修繕したり、床を雑巾で掃除したり、彼女のために買った指輪を慎重に指にはめようとします。健気と言えば健気ですが、これが若いイケメンならまだしも恐らく一回り以上年上の冴えない中年男という事実が気持ち悪さに拍車をかけています。

妄想的&一方的に愛情を募らせていく男の姿を描いた片思いドラマ。決して報われない愛の哀しみが溢れ出します。
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