不在

666号室の不在のレビュー・感想・評価

666号室(1982年製作の映画)
4.0
記録媒体の発達により、それまでは基本的に映画館でしか観ることのできなかった映画が家のテレビでも楽しめるようになったが、それによって映画とテレビの境界が曖昧になってしまった。
大衆は短い時間で簡単に感動できるものや、より過激なアクションを求めるようになり、映画の持つ芸術性には見向きもしなくなった。
現代ではサブスクの台頭がその風潮に更なる拍車をかけており、映画が単なる娯楽ではなく、れっきとした芸術であることを知らない人は増え続けている。
悲しいかな制作側もそれを良しとして、安直で空虚な作品ばかりを世に送り出している。
しかしそんな世の中で、目先の商業的成功よりも自身の芸術を追求する人が大勢いることも事実だ。

この作品で語られる、映画の終焉とは何を指しているのか。
出演する監督らの大半が、テレビの登場がそれにあたると話す。
彼らはテレビやサブスクそのものではなく、その媒体に映画が迎合してしまうことを恐れているのだ。
しかし過去に映画は何度も死に瀕し、その度に生まれ変わってきた。
新たなヌーヴェルヴァーグ、新たなオーバーハウゼン宣言が、この先もきっとあるはずだ。
芸術家が芸術家である限り映画は死なない。
歴史がそれを証明しているのだ。
不在

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