めしいらず

最愛の子のめしいらずのレビュー・感想・評価

最愛の子(2014年製作の映画)
3.5
さらわれてしまった3歳の息子。両親は同じ境遇の仲間たちと探し続け、三年後にようやく発見し、その地の母らしき女から嫌がる息子を無理やり引き剥がし連れ帰る。女が警察にどれほど訴えようと彼女の死んだ夫は誘拐犯。連れ戻せる筈もない。傷ついた女を更に痛めつけるように、今度は下の娘(夫曰く捨て子)も児童養護施設に連れ去られてしまう。女のことを恨みながらも夫婦とて子を産めない彼女の気持ちが察せない訳ではない。女が本当の事情を知っていたかどうかは判然としないけれど、三年の間愛し育てた子を、夫婦がされたのと同じに無理やり連れ去られたのだから。人さらい、人身売買が後を絶たない中国の暗部。傷んだ親たちから報奨金を騙し取ろうと接近してくる悪意の集り。頭を下げて夫婦に詫びる女を、被害者の会が打ち据える痛ましい場面。息子はその様を見ている。夫婦も、被害者の会の親たちも、知らずにさらい子を育てた母も等しく被害者だ。この問題は誰それに非があると言ってのけられるほど簡単じゃない。皆が皆、子どものことで傷ついている。でもいちばん不憫なのは子ども。社会や大人の事情で訳も分からずあちこちさせられ、居場所を勝手に決められる。引き取り手を法に遮断された娘が、養護施設の窓から人待ち顔で外を見つめているラストカットが悲痛。
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