すずき

神の一手のすずきのレビュー・感想・評価

神の一手(2014年製作の映画)
4.2
囲碁のプロ棋士であるテソク。
ヤクザ相手の賭け囲碁をしていた兄を助ける為、カメラとイヤホンを使って兄へ指示を送っていたが、思わぬアクシデントでそのイカサマが露見する。
兄は殺されテソクも死にかけた後、賭博罪で刑務所へ。
だがテソクは囲碁の強さでムショ内の親分に気に入られ、ケンカの稽古をつけてもらう事に。
腕っ節においても強くなった彼は、兄を殺したヤクザ一味への復讐をする為、彼らの取り仕切る賭け囲碁会所に接近する…

復讐バイオレンスアクション×囲碁をミックスした映画。
チェスボクシング(実在するスポーツ)みたいなメチャクチャな組合せだけど、エンタメ性は高く、囲碁のルールを知らない私でも凄く楽しめた。
しかし、囲碁のゲーム性・戦略性はほとんど描かれてないので、囲碁好きには厳しいかも。

賭け囲碁という裏の世界の棋士達が多数登場するんだけど、皆キャラクターが立ってる。
復讐に燃えるやさぐれ元プロ棋士、テソク!
囲碁はそんなに上手くないけど演技力は抜群のコンス!
盲目のストリート老棋士、ジーザス!
片腕が韓国映画最強武器であるハンマーになってる義手のモクス!
敵はヤクザ一味のボスで見た目はインテリスーツ、脱ぐと全身刺青最凶ナイフ使いサルス!
サルスの情婦で元天才少女プロ棋士だった、謎多き美女ペッコプ!
他、作中最強クラスの囲碁の神に愛された子供リャンリャン、正体不明の最強棋士・鬼手と多彩な棋士達が集う、漫画みたいな世界観。

しかし、脚本はかなり穴が多いのよね。
1番の問題は、囲碁要素いる?って所。
いや、囲碁シーンはめっちゃ面白いんだけど、脚本的にはいらない様な気がする。
だって、ヤクザ相手に互いの命を賭けて囲碁を打つんだけど、それで負けて「はいそうですか」って素直に死んでくれる人って普通いないよね。
ましてや相手はヤクザ、普通に暴力に訴えてくる。
だから腕っ節も強い主人公が返り討ちにするんだけど、そんなに強いなら最初からカチコミに行けよ!…とツッコミたくなる。

中ボス戦の顛末も、
大金を賭けて囲碁で対決、勝利→キレた中ボスが襲いかかってくるので叩きのめす→冷凍庫に閉じ込める
で標的の1人に復讐完了かと思いきや、
冷蔵庫内で更に囲碁対決、勝利→キレた中ボスが襲いかかってくるので叩きのめす→難しい詰め囲碁問題を解いたら鍵が開く仕組みにして冷蔵庫に放置
と似たような展開を繰り返す、歪な所がある脚本だった。

でも脚本には穴があっても、映画全体としてはフツーに面白く感じた。
韓国映画らしくエグい暴力シーンも多く、ハイスピードなアクションの殺陣もカッコいい。
しかしいつもの韓国映画だと確実に死ぬような人、死ぬぐらいのダメージを受けた人も、ラストにしれっと生き残ったりするし、後味が爽やかなのも特徴。

鬼手の正体についての伏線は放置されたまま終わる。
続編を匂わせるラストだと思ったら、やっぱり続編(というかスピンオフの過去編)あったのね。いつか見てみたい。