ノラネコの呑んで観るシネマ

500ページの夢の束のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

500ページの夢の束(2017年製作の映画)
4.4
これはキュンと来る。
特にトレッキーにはたまらないだろう。
自閉症を抱えサンフランシスコの施設に暮らすウェンディが、大好きな「スター・トレック」の脚本コンテストのためオリジナル作品を執筆。
しかし郵送が間に合わなくなり、ロスのパラマウントへ直接届けに。
頑なに日々のルーティンを守るウェンディにとって、400マイル先のロスへの旅は、まさに人生を変える大冒険。
“感情”に手こずるスポックの苦闘が自閉症の、ロスへの旅が宇宙での冒険の、親友カークへの友情が離れて暮らす姉への想いのメタファーとなる。
創作への熱が困難な現実を変えて行くという点で、これは「ブリグズビー・ベア」に通じるものがある。
誰かに本当の自分のことを知ってもらいたい、伝えたいという気持ちがウェンディのロードムービーを通してストレートに描かれている。
現実のビターさもいい塩梅。
お巡りさんとのやりとりとか、微笑ましいんだけどアメリカ文化の中の「スター・トレック」の重みあっての描写。
もし日本で作ったら、この話は成立するのだろうか?するとしたら何の作品で?とちょっと考えてしまった。
ダコタ・ファニングが素晴らしく、犬ちゃんがカワイイ。
しかし、これは作品のコンセプト上致し方ないと思うのだけど、「ブリグズビー・ベア」の「SW」オマージュが上手い具合にボカされて普遍性を獲得していたのに対し、こちらはモロに「スター・トレック」縛り。
これが劇中の“スコッティ”が「スター・トレック」を知らないみたいに、作品への入りづらさに繋がってる部分はあると思う。
ブログ記事:
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