みさお

500ページの夢の束のみさおのレビュー・感想・評価

500ページの夢の束(2017年製作の映画)
3.9
自閉症の若い女性ウェンディは「スター・トレック」の大ファン。現在は唯一の肉親、姉オードリーと別の家で暮らしていた。そんなウェンディは「スター・トレック」の脚本コンテストのために全力で脚本を書き上げるが、郵送では締め切りに間に合わないと気付き、自らハリウッドにあるパラマウント撮影所に持ち込もうと長距離バスに乗る--

自閉症のウェンディの成長を描いたロードムービーなんだけど、ウェンディの書いた脚本に彼女の深層心理が秘められており、初めての一人旅の経験と彼女が言葉にする脚本の内容からストーリーが多層的に構成されていて奥行きのある映画だった。

「スター・トレック」登場人物の「スポック」はヴァルカン星人と人間のハーフ、スーパーロジカルで感情を完全に抑制する性格です。自閉症で感情を上手く表現できないウェンディは、自身を「スポック」に投影しています。
「スポック」が「スター・トレック」中で感情的な人間「カーク船長」との関わりから人間性を肯定的に捉えるようになったように、ウェンディは脚本の最後に「スポックの人間の心が放たれる--」と書き込むことで、自身も心を解放したいのだと感じました。「カーク船長」はお姉さんオードリーだったんだね。

ウェンディは、脚本をパラマウントに届けることが出来たことで、自身の心を解放し自分の居場所を見つけられるようになって行くんだね。

「スター・トレック」のグリンゴン語を話せるポリスマンが、素晴らしい味付けだった。美味しくいただきました。

因みにウェンディが落ち着く時に使う言葉「PLEASE STAND BY」は「そのまま待機」を意味していて、「スター・トレック」では状況が読めない時に、乗組員への指示によく使われる言葉です。
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