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キル・ビル Vol.1のtakのレビュー・感想・評価

キル・ビル Vol.1(2003年製作の映画)
4.5
 映画でしか得られない興奮・楽しさ。それをここ最近最も感じた映画かもしれない。全編からビシビシ感じるのはタランティーノの映画愛。主要キャスト観るだけでもおおおぉ!と思うのに、脇役まで気が利いているのがすごい。「少林寺三十六房」のリュー・チャーフィが「グリーン・ホーネット」のカトウマスクで登場するのは驚いたし、風祭ゆきまで出てくるんだよ!(僕のルーツまでバレそうだ・汗)。物語はマカロニ・ウエスタンを彷彿とさせる復讐劇。筋に起伏がないのがやや不満ではあるが、キャラの一人一人が魅力的だし、随所にタランティーノ流のユーモアが散りばめられ飽きさせない。特にルーシー・リュー最高!。

 しかぁし!タランティーノ映画に欠かせないのはバイオレンスというテーマ。「パルプ・フィクション」も楽しめたが、黒人少年の頭ブッ飛ばした後始末をあそこまで笑い飛ばす演出に「マジ?いいのか?倫理的に。」とひいてしまった僕としては、「キル・ビル」の暴力描写にやはり同様に感ずるところはある。特にジュリー・ドレフュスを「ボクシング・ヘレナ」状態にしてしまうくだりは、ちょっとねぇ・・・。確かに往年の時代劇でも人体バラバラはよくある(市川雷蔵主演「斬る」の真っ二つはビックリしたよなぁ)。けれどあそこまでサディスティックにやんなくても・・・とラストにはかなり保守的になってしまいました。青葉屋での”血湧き肉片踊る”大立ち回りは、やりすぎだからもう笑いしかでなかったけどね。

 それを抜きにしてもこの映画は魅力的。タランティーノの選曲のセンスの良さは今回も脱帽です。映像と音楽の調和という点では、雰囲気バッチシ。雪の日本庭園での決闘シーン、フラメンコ調 Don't Let Me Be Misunderstood(悲しき願い) の使い方は見事。そしてザンフィルの ロンリー・シェパード は、ハットリハンゾウから刀を受け取る場面とエンドクレジットの2回流れる。哀愁漂う音色。あの曲をまるでマカロニウエスタンのように使っちゃうんだから、すごいよなぁ。

 かつて、小学校高学年で「スターウォーズ」を観た僕は、その元ネタに黒澤明作品や往年のSF映画があることを後に知り、”そのルーツを知り尽くしたい”と心底思った。本作もそこまでの衝撃なのか?と言えば違うと思うけど、「キル・ビル」もタランティーノのルーツを知る人程楽しめるはず。それは確かだ。映画バカ程楽しめる。そういう人々の為の映画かもね。梶芽衣子の「女囚さそり」シリーズとか藤純子の「緋牡丹博徒」とか観たくなっちゃったよ。かなりマジで。エンドクレジットで流れる怨み節。素晴らしい。
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