川端康成の同名小説を翻案として、ドイツを舞台に置き換えて描いた、退廃的でエロティックな作品。
原作の設定そのままに、謎に満ちた娼館で、決して起きない裸の若い娘と添い寝をしながら、過去のあれこれを思い出す老人のお話。
ただ、原作よりも映画のほうが、老人の追い詰められるほどの孤独と、この背徳的で淫靡な「添い寝」の背後にあるものが、際立たせられて、明確な形を持っています。
それが功を奏しているかというとまた別なのですが、文章を映画化する以上、どれほど頑張っても、世界観を支える魅力のいくらかはこぼれ落ちてしまうのは当然であるので、それを補完するというか、作品としてのまとまった形をとるための改変要素と思えば、許容範囲なのかなとは思います。
とはいえ、少女趣味やエロティックなもの、下衆なものを描いても、清涼な美しさを損なわなかった川端康成の独特な魅力までは流石に持たせられなかったか…というのが正直なところ。
まあ、川端康成の美は、その文体によるところが大きいので、文章でなくなる時点で、無理な話なのかもしれません。
この映画は、清涼な美しさよりも、設定が持つ生々しいエロティックさが際立ってしまっています。
でも、川端の世界観を出そうと頑張った痕跡があちこちに残る作品でした。
ただ、(そもそもの設定のせいも多分にありますが)人にオススメはできない作品ですね…。