ブラックユーモアホフマン

あの日のように抱きしめてのブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

あの日のように抱きしめて(2014年製作の映画)
3.9
初クリスティアン・ペッツォルト。
というか、特集を組まれるまで認識してなかったけど。

これもまた「ナチスと映画」案件だ。
収容所帰りの女。顔に傷を負って整形手術を受けるが、ふつう別人の顔にするところ「元の顔に戻してくれ」と頼む。というのも、女は自分を裏切った夫のことをまだ愛していて再会して元の関係に戻りたいと願っているからだ。しかしすっかり元通りには戻せず、似てるが微妙に違う顔、になる。その顔で夫と再会し、「妻の資産をもらいたいので、妻と似ているあなたに妻のフリをしてもらいたい」と依頼される、という話。

状況が複雑すぎてそれぞれが今どんな気持ちなのか、よく分からない笑
それとこの話、夫目線で描いた方が、怖いし分かりやすいんじゃないかと思った。中盤、スリリングになりきらないのと、状況の分かりづらさでちょっと退屈してしまった。

けど、監督が表現したいのは「どれだけ酷い目に遭わされてきたか、知ろうとも慮ろうともせず、本人が帰ってきたらそれでよかった、”めでたしめでたし”で以前の平和な日常が簡単に帰ってくるものだと考えている、運良く、もしくは狡猾に難を逃れた、おめでたい奴らへの怒り」なのだというのは伝わってきたので、だとしたらまあ確かに女性の方を主人公にするのは理解できた。

この監督の演出の特徴だと思うのだけど、案外あっさりしてる。普通もっとドラマティックに盛り上げそうな場面をサラッと描いてしまう。良し悪しは置いておいて、イズムが感じられて好印象。

ちなみに原題のPHOENIXは、夫が働いている酒場の名前であり、一度死んで蘇った主人公のことも表していると思われる。

【一番好きなシーン】
ラストシーン。こういうドキドキを、願わくば全編に求めていたんだけどね。