回想シーンでご飯3杯いける

WE ARE YOUR FRIENDS ウィー・アー・ユア・フレンズの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

3.2
いざ蓋を開けてみると、EDMというキーワードはストーリーに大きく関係していない。DJを目指す主人公、クラブを経営したいと言う仲間等が聞き親しんでいる音楽がEDMというだけであって、それは2016年公開の青春映画として、とても自然な事だと思う。

当初はクラブイベントのチケットを裁いたり、ドラッグのディーラーをやって小遣いを稼いでいた青年達だが、クラブで知り合ったDJや青年実業家と出会う事で、自分達の将来について考え始める。それは希望であったり不安であったりと、20代前半の彼らにとって、とても自然な事。構成的な粗さが若干気になるものの、クラブやDJを楽しむ若者のリアルな気持ちを描いた本作は、類似作品もあまりなく、それだけで十分に存在価値があると思う。

近年は、実在する(した)ミュージシャンや、既存の業界話を後ろ盾にした音楽版「感動の実話物」が増えてきているが、逆に言うと、それら作品はファン向け、マニア向け映画としての性質が強くなってしまう。それに対し、台詞内の表現も含めて、実在のアーティスト名や曲名を殆ど使わないこの「WE ARE YOUR FRIEND」のスタンスは、ある意味とても潔く、観る者を選ばない。個人的にはここも高く評価したい。

主人公がDJとして成長していくシーンの中で、プレイする音楽ジャンルや、曲作りのノウハウについて触れられている。それらも極めて初心者向けに描かれており、本作品が一部の音楽マニアの為だけではなく、青春映画として広く訴求するドラマを目指している事が伺える。21世紀アメリカ版「トレインスポッティング」と言うのは少し大袈裟ではあるが、アメリカや日本の20歳前後の若者にとって、この「WE ARE YOUR FRIEND」は、大人達が考える以上に響く作品なのではないだろうか。