青いむーみん

神のゆらぎの青いむーみんのレビュー・感想・評価

神のゆらぎ(2014年製作の映画)
3.6
 トム・アット・ザ・ファーム以降グザヴィエ・ドラン絡みはなんとなく観に行ってしまう習性がついて今作もそのノリで行ってきた。
 宗教なんかよりまず今ある生命が大事でしょ?と言うのは至極真っ当な普通の意見だと思うが、宗教の側の人間にとっては価値観が違うので必ずしもそうとは限らない。信仰は永遠。今だけの命よりも永遠の方が大事だというのが彼らの価値観だ。それにケチを付けることは出来ないだろう。しかしこの映画のストーリーはそれにケチを付けるようなことを意図的にやってくる。宗教なんか信じてるから地獄に落ちちゃうんだよとでも言うような貶め方をやってくる。自分自身は無宗教だが信仰を持つ者に対して煽るような気持ちはないので信じる者を虐げるストーリーに対して違和感を感じた。ジュリーを含めエティエンヌの家族がストーリーに虐げられるのは保守派を羽交い締めにして叩く改革派のようで辛かった。メインの家族は保守派でストーリーが改革派。フラットなのは登場キャラクター内で最も神に対してゆらいでいたジュリーのみ。なので彼女に対して多くの人が最も感情移入すると思うが彼女も元保守派としてしっかり叩かれる。この映画だけ見れば信じることが最初っから間違いだったとでもいうような描き方になっていて、ラース・フォン・トリアーのような意地悪というより裏にあるイデオロギーのようなものを感じてしまってうまくノレなかった。しかしおそらく監督の撮りたいモノは明確に撮れていてヘヴィな題材をサスペンス風群像劇に仕立てあげて見せた手腕は十分評価に値すると思う。