たまこ

グランドフィナーレのたまこのレビュー・感想・評価

グランドフィナーレ(2015年製作の映画)
4.0
偉大な音楽家ベリンジャー(Michael Caine)は、現役を引退し、スイスの高級ホテルで映画監督の友人ミック(Harvey Keitel)と優雅なバカンスを過ごす。

そんな折、英国女王から舞台への復帰を打診されるが、彼には復帰を拒む理由があった。

紆余曲折を経てなんだかんだ復帰するドタバタ感動劇と踏んでいたので、意外な作風に驚いた。

映像、音楽、登場人物達のセリフ、その全てが美しいが、シュールで鋭い皮肉に満ちている。コメディタッチに語られるシーンが多いが、終盤になるにつれ、監督の意図するところが、茶番でもなんでもない、人間の残酷さや不条理を描くことであると知らされる。

例えば、Paul Dano演じる若手俳優の言葉。
「恐怖と欲望、どちらを語るべきか悩んでいたが、欲望を語ることにした。人間は欲望のために生きている」
こんな内容だったと思ったが、彼の選択肢の中に『喜び』や『希望』がないことに一瞬戦慄が走った。がしかし、同時に妙な説得力もあった。

一冊の哲学書を読み終えた後のような後味。私はとても好きだが、観る人を選ぶ映画だろう。

劇中多用される唯一のポジティブなセリフが、"I'm good in bed."
人間はやはり欲望に生きる定めなのだ(笑)
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