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ロブスターのQMのネタバレレビュー・内容・結末

ロブスター(2015年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

このまま朝までストーリーが続きそうと思うほど静かな悪夢の時間がすぎると、こんだは次がまったく予測不能な展開に。すごく暴力的なことが繰り広げられてるはずなのに、設定がめちゃくちゃな上にすべてが淡々と静かにこなされるから、リアルに殺人してるのか単なるゲームなのか終始よくわからない。疑問符のない問いを擦りつけて立ち去られてしまったようなラストには苦笑いしかなく。こういう余韻って久々に映画観たなーって気分にさせられる。
肝心なストーリーは、恋愛とは?結婚とは?というシンプルなテーマだが、特に恋愛なんて個人間の感情なのにそれを社会ルール化してみたり、生死とか犠牲とか極端なものに絡めてぶっこんできて、人間の暗い部分からそれらを考えさせるようなアプローチ。
恋愛を目的に徹底管理された環境下ではチラつかせられる死を避けるために恋愛を拒むのに、恋愛してはいけない環境に来ると今度は死をもってでもそれを貫きたいと思う人間。そう考えると、必ずしも自分の遺伝子を残すことだけが人間の恋愛とか結婚とかの目的ではないのかもしれないとも思う。
恋は共通点から生まれる。しかもそれは自分のコンプレックスとしてあるもの。自覚しやすい長所同士では結びつかず、短所こそが他者との結びつきをつくりやすい。=似たもの同士と違うもの同士はどちらが相性がいいか?という話はよくあるが、ここでは前者であると、しつこいくらいに強調してくる(と理解した)
自分の恋を愛に発展させるために、人間はその対象に貸しをつくる。困ってるところを助けたり好きなものをあげるのは仮を作らせるため。=自己犠牲こそ愛とも言うが、本当は自己犠牲などではなく相手に貸しを作り相手の上に立ちたいor所有心。

ラストは本当にディスカッションしがいがあるもので、色んな解釈ができるのが本当におもしろい。人間にとって最も避けたいのはパートナーなしで1人でいることによる死だと理解したので、最後は思いとどまって目の見えない彼女を横に置くことで死をまのがれるんだと思ったけど、共通点を求めて自分も盲になるというロマンチックなエンディングも考えられる。一緒に見た人と議論して色んな正解があることはわかったが、今だ映画冒頭の牛のつがいを撃ち殺すシーンがわからなさ過ぎる……恋愛できなかったら動物に"されてしまう"ルールがあって、人間はそれを避けるため出来ない恋愛をしようと頑張るのだが、もしかしたら動物のほうがもっとシンプルにパートナーを見つけられるので、本当に恋愛に価値があると思ってるなら動物になったほうが幸せかもね?って皮肉かな。でもそれを撃ち殺すってことは動物的な生殖のための恋愛というかパートナーシップの否定かな。
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