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オーバー・フェンスのtanataniのレビュー・感想・評価

オーバー・フェンス(2016年製作の映画)
3.6
山下監督はもらとりあむタマ子や超能力研究部の三人、リアリズムの宿などのユーモラスなあるいはシュールなドキュメント感が私は好きでして、そこのみにての佐藤泰志さん原作だと、どう解釈されるのかと気になっていました。

スタッフの顔ぶれを見てもどうしてもそこのみにてと比較してしまいます。働いていない男と窮屈そうな女が出会ってしまうところ。山下監督の上の三つなど主人公は人生の中の休日がおもしろいねって話なので今回の白岩(オダギリジョー)も働いてないしどうなるのかなって楽しみにしていました。のに。

原作の内容がやはりハードのようで笑えるところはすくなかったのです。じゃあ山下監督らしさを感じたのはどこかというと、どこかに存在する場所で確かに実在する人間たちが目の前にいる!という、3DかMX4Dの感じです。画面の中で人と人が、心と心を本当に通わせ始めた、あっ、今ちょっと通じた、みたいなことが起きているように見えたんです。
白岩、聡(蒼井優)、代島(松田翔太)が最初に店で顔を合わせるシーンは、もうなんだこりゃでしたよ。三人の感情が手にとれそうでした。オダギリジョーさんと蒼井さんの場面はその後もどれもひりひりするようでした。顔面のアップが多くて蒼井さんの眼球の動きや瞬きはすごくリアルで恐ろしくさえありました。

残念なところは白岩や聡の過去について説明のセリフで語りすぎて退屈な感じがしました。動作や回想の映像で見てもよかったかなと思いました。白岩が闇に向かってから揚げ弁当と二本のスーパードライを食しているような場面がもっと見たかったです。

個人的な趣味で好きな場面があったのでグッドでした。
いちばんは北村有起哉さん演じる原一家のシーンはどれもほっこりしました。嫁さん役であのひとが登場したときはガッツポーズしました。ぐるりのことやゴールデンンスランバーなんか彼女が台所に立つ場面がいいもんねえ。原の役もほんとうにいとおしくて、ホームセンターの場面は泣いてしまいました。SP以来の北村さんの光る演技でした。
松澤匠さん演じる島田も加わった焼肉屋の場面もいいシーンでした。もういつナイフがとびだすかひやひやでした。一瞬うつる満島真之介さん演じる森君のスーパーのシーンも泣けますよね。
優香さんも三重の神去村からでて東京で暮らしてたらあんな感じなのかなって。スカーフ素敵だなって。

あの鳥、超能力研究部の目撃する飛行物体的なものだと思うのですが、もっとこの鳥見たいなと思った瞬間、正面からスクリーンに登場したのではっとしました。まあ、早く登場しすぎな気はしたんですが、びっくりしたんです。
おちはいいませんが、子供(クソガキ)のサスペンスがあり動物パニックに変わり(すごく楽しい)、スガシカオさんのサヨナラホームランと映画ポテチを思い出しました。
このおち、ちょっとやりすぎなようにも思いました。青いワンピースは素敵でした。

それと見た後しばらくは赤い車を見るとドキドキすることまちがいありません。
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