ユースケ

この世界の片隅にのユースケのネタバレレビュー・内容・結末

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ディテールにこだわる漫画家・こうの史代の漫画【この世界の片隅に】をディテールにこだわる映画監督・片渕須直が映像化した本作は、戦争を受け入れて生きた当時の人々のリアルな日常生活を描き、特別な場所の特別な人々の特別な出来事だった戦争を日常生活の延長線上に感じさせた傑作。
癒し系のキャラクターで本作を敬遠しているのであれば、萌え系のキャラクターで【魔法少女 まどか☆マギカ】を敬遠するくらい勿体無い一本です。

みどころは、もちろん、すずさん。
徹底した現地取材によって再現された当時の広島や呉の街並みも、丁寧なアニメーションによって描き出された自然な動きも、全てはすずさんの存在を観客に信じさせるための下準備。
乏しい配給に工夫を凝らして音楽を奏でるように料理をするすずさんも、凛々しい顔でスケッチをしたと思ったら失敗してありゃあ顏をするすずさんも、たまりません。広島に原爆が投下される8月6日へのカウントダウンにはヒヤヒヤさせられ、玉音放送に感情を露わにするシーンには嗚咽を堪えるのが難しいくらい感情を揺さぶられました。
広島弁と呉弁を使い分け、すずさんのホワホワ感を再現したのん(能年玲奈)ちゃんの声の演技もお見事。もうすずさんの声は彼女以外考えられません。

「生きるっていうことだけで涙がぼろぼろあふれてくる、素敵な作品です」とのんちゃんがインタビューで語っていたように、丹念に描かれた日常生活の描写に泣かされた本作。鑑賞後にはすずさんの心を歌ったようなコトリンゴの【悲しくてやりきれない】が流れる予告編を見ただけで泣ける体になってしまっている事でしょう。


二回目以降の鑑賞について…
シーンの取捨選択とシーンの補強演出の確かさを知るために原作漫画を読みましょう。すずさんの少女性を残すためにやむなく削られた周作とリンが愛し合っていた過去を知ってすずさんが悩むエピソードを知る事で初恋の相手である水原哲の入湯上陸の件がたまらなくなると思います。
また、ディテールにこだわった戦艦を楽しむために【艦隊これくしょん -艦これ-】の情報を頭に入れておきましょう。

個人的には、失った右腕にドリル型のアタッチメントを装着してアメリカ軍を叩きのめすすずさんが活躍する完全版に期待しております。

※二回目の鑑賞日2017.1.8