小波norisuke

湯を沸かすほどの熱い愛の小波norisukeのレビュー・感想・評価

湯を沸かすほどの熱い愛(2016年製作の映画)
4.0
主人公が死にゆく話であるのに湿っぽさを感じない。観終わって、熱い湯に浸かった後のように体の芯からぽかぽかと温まる。

脚本には不満がある。お父ちゃんは人が良すぎるし、どんなに思い詰めていようと、教室であんなことをする高校生の女の子はいないだろう。ヒッチハイカーの描写は浅過ぎる。

しかし、そんなことを許してしまうほどに、お母ちゃんの熱い愛情に圧倒されてしまう。

学校でいじめられている我が子を、逃げたら駄目だと学校に送り出すことは、どんなに辛いだろう。逃げなければ駄目な時もあるはずだ。お母ちゃんと私は違う、と娘が思うのも当然だ。しかし、いつも凛々しく明るい母の姿を見て育った娘だからこそ、逃げずに闘った。

お母ちゃんの熱い愛情は、お母ちゃん自身が愛情に餓えているからこそ沸きあがる。お母ちゃんの熱い愛を受けた人たちは、精一杯の愛情を誰かに返したくなる。

「お母ちゃんのこと絶対一人にしないから安心してね」娘が死にゆくお母ちゃんにかける言葉。なんて安堵させてくれる言葉だろう。この子は、きっと出会う誰をも一人にせず、深く愛することができるだろう。

銭湯の煙突から上る煙りまでもが熱い愛情を伝えてくれる。

宮沢りえさんやオダギリジョーさんはもちろんだが、杉咲花さんが素晴らしかった。

帰り道、駅で、電車の中で、歩きながらも、思い出して、はらはら泣いてしまった。
小波norisuke

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