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湯を沸かすほどの熱い愛のundoのレビュー・感想・評価

湯を沸かすほどの熱い愛(2016年製作の映画)
5.0
まだ死んでいない、すべての人へ。

中野量太監督のヒューマンドラマ。
がんにより、余命2ヶ月を告知された幸野双葉(宮沢りえ)。
夫は蒸発中。娘はまだ16歳。
まだ死ぬわけにはいかない、彼女の最後の戦いの幕が上がる。

あくまで個人的な評価だけど、生涯初の満点作品。これ以上の作品に出会うまで、オールタイムベストはこれでいいと感じている。

自分が映画に求めているのは「人生への憧れ」
様々に描かれる人の生き方、人生を通して、より心豊かに生きるための力を映画からもらいたいと思っている。
そういう意味では、これまで観た中で、それを最も感じさせてくれる作品だと思う。

序盤からすでにうっすらと涙ぐませてくれる展開だったけど、中盤からはずっとボロ泣き状態。予告編でさんざん聴いていたはずのテーマ曲「愛のゆくえ」が流れるタイミングも完璧すぎて、全然違う曲に聴こえた。

ストーリーはいたってシンプルで、どこかで知っているような、ややもすれば陳腐ともなりかねないエピソード達なのに、それらのつなぎ方がとても上手で丁寧でまっすぐで、ただただ引き込まれる。

宮沢りえの演技が突出して素晴らしい、というわけでもないのだけど、きまって泣かされたのは彼女が重要な場面で吐く印象的なセリフの数々。時に強く、時に弱々しく絞り出されるそれらを聞くたびに破壊されまくる涙腺(笑)。

他のキャストも素晴らしくて、
目だけで演技ができる杉咲花、甲斐性なしを演じさせたらこの世にライバルが見当たらないオダギリジョー、11歳にして影のある表情を出せる伊東蒼。
少し変わった、だけれども、しっかりとつながった素晴らしい家族を演じ上げた。

人が死へと向かう時間は平等ではない。
どう生きようと、死はある日突然忍び寄る。
そして気づく。人生には、何ひとつ、無為に過ごして良い瞬間などなかったということを。
幸いにして、まだ死んでいない人、これから生まれてくる人には、そのことに気づく機会がまだある。
機会があれば、努力次第で何かを変えることもあるだろう。せっかくこの映画からもらったチャンス、私も頑張ろうと思った。
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