エドワード農村

湯を沸かすほどの熱い愛のエドワード農村のネタバレレビュー・内容・結末

湯を沸かすほどの熱い愛(2016年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

映画というより、小劇場の舞台のようだった。やや癖があるが、訴えたいことは限りなく純潔で、たいへん熱のこもった作品。心が揺さぶられる。

宮沢りえが演じる母、双葉の心情は場面を切り取れば時に強引に映るけれど、すべてを通してみれば「双葉さんなら」という気にさせる心地よい一癖である。それはきっと、相手を信頼して任せて、だけどどこかでいつも見ていてくれるからなんだと思う。例えそれが血縁でなくとも、繋がりたい意志さえあれば人は繋がる。

双葉さんに真正面からぶつかられた彼や彼女たちはこれから先、面倒なことがあっても、その場でやり過ごしたりはしないように思うし、無垢な強靭さを手に入れ成長するさまは実に気持ちがいいものだ。

杉咲花が演じる娘、安澄の中にゆっくり醸成されゆく母の面影に何度も揺さぶられた。杉咲花は池脇千鶴が最初に出てきたときを思い出す負けん気を感じる骨太な女優さん。トレンディに思えて、実はただ者じゃない松坂桃李くん。オダジョーはクズにはクズだけど、トゲを完全に抜けるようになってなんならダサさが魅力として光る。個人的には探偵役の俳優さんの抜けた感じがたまらなく粋だった。

双葉に感化されて真価を発揮するの周りの人間たちで、人生の主役はあなたたちだ、と何度も何度も言われていた感覚がした。双葉は主役のようで最高の脇役だったのかもしれない。