ヨツ

顔のないヒトラーたちのヨツのネタバレレビュー・内容・結末

顔のないヒトラーたち(2014年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

主人公の若き検事が、忘れ去られようとするアウシュビッツの真実を、そして正義を追い求める話。

主人公を含めた若者たちが、アウシュビッツについてあまりに無知なことに驚いた。今ではアウシュビッツといえば、大量虐殺のイメージがどんな人の頭にも思い浮かぶのでは?

戦後、元親衛隊員が他の人と変わらない暮らしをしていたこと、上からの圧力で裁きたくても裁けない人がいたこと、初めて知った。

小学校のころ、アウシュビッツ収容所の跡地を訪れ、資料館に展示されている収容者の毛髪や鞄の数々を見たことを思い出した。
当時の写真も展示されていたけれど、それぞれの出身地が書かれている鞄が積み上げられている展示が何より印象的だった。そこで亡くなっていった人たちは自分と変わらない、歴史上の数字ではない、人間であったのだと身に迫る実感を与えられた。

主人公が裁判を諦めそうになるとき、大義を見失ったという台詞があった。
人の罪を追求するとき、自分の立場に置き換えて考えると、どうしても自分がその立場にあったら同じことをしたのではないか?自分に彼/彼女を裁く権利はあるのか?という葛藤がついてまわる。
そこで発せられた、罰でなく被害者とその記憶に目を向けろ、という台詞に考えさせられた。
誰もがその葛藤故に人を裁くことを諦めたら、だれが正義を実行するのだろう?完ぺきで客観的な正義などこの世のどこにも存在しないならば、人を裁いたのだという重みを背負いながらも、正義を追い求めることこそが、必要なことではないのか。

圧力に屈せず、真実を追い求めようとする主人公に、無知であることのこわさを教えられた気がする。
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