風の旅人

パッセンジャーの風の旅人のネタバレレビュー・内容・結末

パッセンジャー(2016年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

観る前に想像していた通り、未来版「アダムとイヴの物語」といった内容。
最初にジム(クリス・プラット)が冬眠ポッドの故障で目覚めるが、それは予定より90年も早いものだった。
これほどの恐怖が他にあるだろうか。
他者が一人もいない世界の中で、自分だけが無意味に年老いていく。
だから彼が孤独に耐えられなくなり、オーロラ(ジェニファー・ローレンス)のポッドを故意に開けたとして、誰が彼を責められるだろうか。
彼を責めることができるのは彼女だけだ。
物語はジムとアンドロイドのアーサー(マイケル・シーン)と観客だけが知っている「秘密」を、オーロラが知ることで一変する。
オーロラはそれまで純粋無垢に偶然二人だけが目覚めたのだと思い込み、ジムとの恋愛を楽しんでいた。
あるいは「運命」を感じていたのかもしれない。
しかし秘密を知った彼女は、当然ジムを責め始める。
そんな折に宇宙船に故障が発生し、コンピュータのシステム・エラーが原因で、乗組員のガス(ローレンス・フィッシュバーン)が目覚める。
彼はジムとオーロラを導くメンター(助言者)として登場するが、その役割を終えると、物語から退場させられる。
ひどい扱いだが、「アダムとイヴの物語」に他の登場人物はいらないのだ。
二人だけの閉じられた世界だからこそ、この映画は美しい。
二人はガスの遺志を継ぎ、力を合わせ、故障を修理する。
90年後、目覚めた他の乗客たち(passengers)は二人が作った「楽園」を見ることになる。
さすが『イミテーション・ゲーム』の監督だけあり、ヒューマン・ドラマとラブ・ロマンスをうまく融合させている。
賛否両論あるだろうが、個人的には文句なしの傑作。
風の旅人

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