回想シーンでご飯3杯いける

パッセンジャーの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

パッセンジャー(2016年製作の映画)
3.0
公開されているあらすじにある「冬眠装置で眠る乗客の中で、なぜか2人の男女だけが早く目覚めてしまった」が微妙に嘘。いや、かなり大嘘。それはまあ、映画を面白く観てもらう為に必要な事で、別に構わないのだけれど、結果的にこの嘘の部分をどう捉えるかで、本作の評価はかなり変わってくると思う。

遠い宇宙で1組の男女だけが目覚めて宇宙旅行、、、なのであればロマンティックな話なのだが、実際は男のジムがかなりのクズなのだ。いやいやクズというより犯罪者。

(以下、未見の方の為に、ややぼかして書きます)

結局のところ、本作の前半部分に於いて、観客がジムに同情できる描写があったか否かが重要になる。つまり、彼の孤独を何処まで描写できていたのか?という部分。

しかし、前半でのジムは、お洒落なバーで酒を飲み、船内のアトラクションで楽しそうに過ごしている。ようやく髭が伸びた頃にいきなり孤独を訴えられても同情できないのだ。例えば、孤独を紛らわせる為にバレーボールに顔を書いて会話を楽しむとか、そのバレーボールに「ウィルソン」という名前をつけるとか(以上、トム・ハンクス主演の無人島映画"キャスト・アウェイ"からの引用です)、映像的な説得力があれば、彼の行動に対する印象も大きく変わったはず。

SFとラブストーリーを融合させる試みは確かに楽しい。美しい宇宙や宇宙船の映像もかなりのクオリティー。あまり深く考えないのであれば十分に楽しめる作品であるが、先に書いた描写不足や、ジムを演じたクリス・プラットの軽いキャラクターで、とても勿体無い事になっている。相手役のジェニファー・ローレンスの存在感は素晴らしかったのに。