「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」(2018年)のショーン・ベイカー監督が、ひとつ前に撮った作品。全編、iPhone5Sに特殊レンズを装着して撮影した異色作。2017年の公開時に、観逃していたのだが、「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」の出来の良さに感心して、DVDを購入して観賞。スマホを駆使した機動性の高い撮影に驚く。しかも、色調もすでにこの作品で、フロリダを舞台にした次回作のカラフルでドリーミーな世界を出現させている。
舞台はロサンゼルスのどこにでもあるような街。そこで暮らすトランスジェンダーの女性ふたりを中心に、彼女(彼)たちの周囲で起こる事どもを、見事にドラマとして構築している。単なるスマホで撮影した作品ということだけでなく、この手軽な撮影手段を駆使して、この街に住む人々の姿をビビッドに、そしてリアルに描いている。一種の群像劇ではあるが、当時人物を有機的に結びつけているところは、スマホで撮られた作品という域を、はるかに脱している。そのあたりは、若きフィルムメイカー、ショーン・ベイカーの才気が満ち溢れている。次にどんな作品を撮るのか、期待大の若手監督だ。
