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真珠のボタンのpikaのレビュー・感想・評価

真珠のボタン(2015年製作の映画)
3.5
「万物は水である」というのを丁寧に丁寧に映像とナレーションで紐解き説明し、考えず感じるよう鑑賞者の身に染み込ませるグスマンの演出が極上。
先住民の虐殺やチリクーデター後の独裁政権下での逮捕や拷問など、関係者たちにインタビューして映画として残すことも重要だけど、それだけに留まらずその先を行っているグスマンの意図が凄い。
虐殺を行ったことや者に対して直接的ではなく、問い続けることで忘れまいとする姿勢。
言葉にすれば陳腐になりかねない微妙で難しい問題を、生命に不可欠な万物の元たる水を用いて刻み込むよう映画にぶつける、北風に対する太陽のような切り口が鮮やか。

全く別の場所、違う時代に生きていたとしても水というもので繋がっているのと比喩するように我々全てに責任があるというメッセージがズシリとくるし、ただ見知らぬ事件を知って終わりではなく「繰り返してはならない」というような余韻を残す。

「考えるという行為は、すべてのものに適応するという水の能力に似ている」
宇宙を表現した先住民の生命と魂の芸術。
水には音が、音楽がって音楽家のおっさんが水の歌を再現するインパクト!笑

ちょっと演出色が強いがその分グスマンの意図もハッキリと伝わってくるので興味深く、面白かった。
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