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アンナの出会いのらのレビュー・感想・評価

アンナの出会い(1978年製作の映画)
3.7
ファスト映画や倍速視聴が当たり前になってしまった時代に、シャンタル・アケルマンの映画は「本当に豊かな時間との向き合い方とは何か」を教えてくれる。映画のプロモーションのためにヨーロッパを回る主人公は、道中で様々な人々に出会い言葉を交わす(そこには実の母へのカミングアウトも含まれる)が、かえって孤独の感覚は深まるばかり。そんなうら寂しさの美学は、この映画が贅沢な時間の使い方をしているからこそ味わえるものである。アケルマンの映画からは、物語があるからカメラを回すのではなく、カメラを回すこと(撮り続けること)で生まれる物語をとらえようという矜持すら感じる。

特に好きなのは、夜の列車の通路で出会った男とタバコをふかしながら会話するシークエンス。ここは構図もきまっていて列車の走行音も良いし、何より駅に到着するたびにわざわざ長い時間をかけて映し出されるホームの様子が趣深くて美しい。
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