【ダルハウジーの雪はすべてを鎮める】
IFFJ2014の上映にて。初参戦ですが、時間が合わずこれ一本になりそう。
1950年代の西ベンガル。裕福な地主のわがまま娘と、若き考古学者の格差ラブストーリー…と思わせて、持つ者持たざる者、という格差からのノワールへとなだれ込み、オー・ヘンリーも取り込んだ生死のドラマへと着地します。
初見の所感は、普通に面白い映画をみた!という満足感。ツッコミ処も多いし、物語の展開は腹八分で止まったな…との不発感もおぼえますが、ハリウッドや日本映画が忘れてしまった素朴な面白さが光り最後まで引っ張ります。クラシックであるっていいなあ(笑)。
上映環境はイマイチでしたが。画質が荒くて。悪いのは元データ?プロジェクター?
英国の手先とも映る、やがて地主の明暗を分けたザミーンダーリー制度が起点にあり興味深かったのですが、その掘り込みが浅かったのは肩透かし。そこから持たざる者、主人公ヴァルンの出自との対比がより出れば、彼の人物像も禁断の愛も際立ったのに。ザミンダール(地主)はインド映画ではけっこう定番らしいから今更、なのかな?
ヴァルン役ランヴィール・スンの、北村一輝ふう半悪人顔は、作品の顔ともなってよかったですが。地主の娘パーキー役、ソーナクシー・シンハーは知り合いの酒乱女に顔そっくりで中々馴染めなくて。
で、やたらと急くんですよね彼女。パーシー特急と呼ばれている、と後でフォロー入るけど、後半になるとその性格がまるで生かされず勿体ない。
わがままが女を剥き出す可愛らしさに転じるところがとてもよかったのに。彼女の佇まいや演技は、素を活かしたような後半の方がずっと共感できたのですけれど。
法改正によるザミンダール一夜の没落、そこに乗じる略奪者。前半の甘く残酷な積み上げがスリリング。インターミッション前、タイトルの意味が牙を剥くところからの高揚感がものすごかった。
逆に後半は、せっかくの積み上げを活かしそこなったと思う。魅力的な脇役も消えちゃうし。展開もあまりに強引。それでもパワーが途切れないのがすごいんだけど。
オー・ヘンリーの引用も、途中はギャグ寸前でハラハラしたものの最後でギリ、キュンとさせてくれました(笑)。
後半の肝は、きっと静謐な雪景色なのでしょう。これはお見事。憎しみも絶望も死も、しん、と呑み込むやさしさに満ちていましたよ。
<2014.10.14記>