独り言

ニーナ・シモン 魂の歌の独り言のネタバレレビュー・内容・結末

ニーナ・シモン 魂の歌(2015年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

類稀なる才能の居場所探し。

自分の初めてニーナシモンの動画を見たのはこの映画のイントロに出てくるモントルーのライブだったらしい。
その時の印象は、何故自分はここにいるんだろうと思っていそうな、なんだか居心地の悪そうな不安定な女性。
巫女系の、ステージにいるのにあまりにも過敏そうな部分が剥き出しになるタイプの人で困惑した。

この映画は原題通り、その彼女の人生に何があったのかを垣間見るものだった。(邦題何とかならなかったのか問題)
彼女の才能は語るべくもない。
大きな時代のうねりの中、黒人と白人の狭間で生き、すり減りながらも居場所を探していた人だったことがわかった。
ゴスペルをベースにクラシックとジャズとブルース。
マイケル同様、黒人音楽と白人音楽を掛け合わせた唯一無二の歌とピアノは彼女にとっては祝福と同時に呪いでもあるようだった。

アフリカの生活は素晴らしいと言いつつ、同時に娘に手をあげる不安定さは、共依存していたDVマネージャー夫や公民権運動のせいだけでなく、幼少期から常に普通の黒人とは違う道を歩んだ孤独で培われたもののような気がする。
ピアノを覚えた4歳からずっと、彼女を音楽と切り離して見てくれた人は居なかったんだろう。
きっと彼女の望むクラシックの道にすすんでいたとしても、結局は同じように孤独を感じて破滅や依存を選ぶんではないかと思ってしまう。
足元がグラついてる人間ほど極端なものでないと何も実感ができなくて、依存に陥りやすい。
(エイミーワインハウスとか…)

結局、彼女は白人に見出され、また望むか望まないか白人に支えられて復活する。
青い鳥の話の通り、彼女を妹のように思っていたという白人のギタリストのような、強烈でなくても、ささやかな視線に価値をおけるかどうかで幸せは決まる。

青い鳥のはずの娘さんがとにかく可哀想だったな…。
立派に育っていたのは多感な時期に自立せざる得なかったせいなんだろうか。
娘さんのためにもあの晩年があって本当に良かった。

ニーナシモンの曲はそう多く知ってなかったけど、どれもやはりすごかった。声に魔法がかかっている。
見る前にニーナシモンの曲の印象の話をしてたんだけど、フランス系のおじさんが全く同じ事を言ってた。
Ain't Got No, I Got Life詩も含めて良かったな。
あと、今になって弾くピアノの音がかなり好みだったのも嬉しい発見だった。改めて聞いた出だしの一音でもっていかれた。
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