明石です

無伴奏の明石ですのレビュー・感想・評価

無伴奏(2016年製作の映画)
4.8
「私たちが初めてキスした夜の月は、まだアメリカの足跡がない月だったのよ」

学生運動が最高潮にあった1969年の東北を背景に、学生運動に参加した女子高生と大学生が恋に落ちる話。角材とヘルメットで機動隊相手に攻防を繰り広げるもジェラルミンの盾で突破されボコボコにされたり、フェミニズム運動を主導すべく「制服廃止運動」を組織したり、卒業式を「粉砕」したりと、この時代に起きていたことを踏襲しつつ、その裏で恋愛劇をやる作風に、ふと『いちご白書』を思い出した。直木賞作家の原作者の実体験をもとに描かれた映画らしいので、オマージュというわけではないと思う。この時代に起きていたことは、どの国のどの地域でも似通っていたということなんだろうな。若いパワーの発散が、政治活動に向かうのか恋愛に向かうのかくらいの違いしかなく、そしてその二つは(若者にとっては)大して違わない。

主人公と大学生の恋人が、裸で抱き合いながら「好きな作家は?」「ボリス·ヴィアン、カミュ、倉橋由美子」とキスしながら囁くシーンが滅茶苦茶フェチでした笑。作家のチョイスも含め最高(「実は隠れサガンファンなの。マルクスの『資本論』は本当はよく分かんないの」ってところも良い)。そして「詩人は金子光晴、ボードレール、それにエリュアールも好き」いやはや、こんな風に愛を交わせたら百年の恋も実るというもの、、

主人公の成海璃子はとびきり演技が上手くそして思った以上に女子高生でした笑。私が子供の頃にやってたドラマ『受験の神様』だか何だかで演じてた女子中学生役の頃から、良い意味で全然見た目が変わってない。お相手のバカリズム(に似てる俳優さん、役名は忘れた)にまつわる話がたまらなく好きでした。幼くして両親の自殺に立ち会い、女優のように美しい姉と支え合い生きていく中、ふとしたはずみで肌を重ねてしまい、以来、彼女しか愛せなくなった大学生の弟とか、、私の性癖のど真ん中よそれ。

—好きな台詞
「死についてばっか考えてる時って、意外と死なないものよ。な〜んにも考えれなくなった時が危ないの」

「プラトニックという言葉はまやかしだ。人は他人への欲望を抑えようとする時、必ず精神でセックスすることになる」
明石です

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