魂は故郷へ帰る。
1920年〜30年代に活躍したアメリカの小説家、トマス・ウルフと、彼を見出し育てた編集者、マックス・パーキンズ。
実話を基にした、彼らのビジネスを超えた魂の結びつきを描く。
深い時間帯でのレイトショー。
小さな劇場、少ない観客、熱さを内包しながらも品良く静かに抑えられた良質な作品。
もともとレイトショー好きの私にとっては、なんともぜいたくな至福の時間。
生まれたばかりの小説は、作家の衝動そのものであり、それを一人前の物語に育てるためには編集者の助けが必要。必要なものは、我が子を育てるかのような愛情。時に厳しく、時に優しく。生みの親が躊躇するような手術もできるのが育ての親。
作品を巡る彼らの熱い攻防。
トマスからマックスに対する、見出してくれたことへの恩義と敬愛。
トマスの深い才能に対するマックスからトマスへの敬意。
トマスの愛人、アイリーンの嫉妬と情念。
そして、
父親と折り合いが悪かったトマス。
本当は男の子が欲しかったマックス。
これらの熱い感情が奥底にうごめいているにも関わらず、作品を包む映像や雰囲気はとても上品で静謐。抑えの効いた美しさ。これが本作の最大の魅力と感じた。
互いにビジネスパートナーであり、仲間であり、理解者であり、友人であり、親でもあり子でもあり、友情を超えた、互いの魂が帰る場所。
それを故郷と言っても言い過ぎではないだろう。