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ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐのundoのレビュー・感想・評価

4.0
魂は故郷へ帰る。

1920年〜30年代に活躍したアメリカの小説家、トマス・ウルフと、彼を見出し育てた編集者、マックス・パーキンズ。
実話を基にした、彼らのビジネスを超えた魂の結びつきを描く。

深い時間帯でのレイトショー。
小さな劇場、少ない観客、熱さを内包しながらも品良く静かに抑えられた良質な作品。
もともとレイトショー好きの私にとっては、なんともぜいたくな至福の時間。

生まれたばかりの小説は、作家の衝動そのものであり、それを一人前の物語に育てるためには編集者の助けが必要。必要なものは、我が子を育てるかのような愛情。時に厳しく、時に優しく。生みの親が躊躇するような手術もできるのが育ての親。

作品を巡る彼らの熱い攻防。
トマスからマックスに対する、見出してくれたことへの恩義と敬愛。
トマスの深い才能に対するマックスからトマスへの敬意。
トマスの愛人、アイリーンの嫉妬と情念。
そして、
父親と折り合いが悪かったトマス。
本当は男の子が欲しかったマックス。

これらの熱い感情が奥底にうごめいているにも関わらず、作品を包む映像や雰囲気はとても上品で静謐。抑えの効いた美しさ。これが本作の最大の魅力と感じた。

互いにビジネスパートナーであり、仲間であり、理解者であり、友人であり、親でもあり子でもあり、友情を超えた、互いの魂が帰る場所。

それを故郷と言っても言い過ぎではないだろう。
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